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川崎フロンターレの「絶対的守護神」チョン・ソンリョンとポジションを争う33歳・上福元直人の「異色な経歴」を紐解く (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【チョン・ソンリョンのすごみ】

「もちろん自分も、常に試合に勝ち続けたいという意識でプレーしてきましたが、一方で勝てない状況もたくさん経験してきました。そういう時には、ひとりの選手として、GKとして、どんな立ち居振る舞いをしなければいけないのかと、ずっと試行錯誤してきました。気持ちを切り替えて、次に向かう、前に進むという姿勢は、年齢的な部分も含め、自分が働きかけられるところもたくさんあると、このチームに来て感じています」

 J1リーグ第9節の浦和レッズ戦からゴールマウスを守っているように、彼自身もポジションを掴むのは容易ではなかった。「前に進む姿勢」は、チームという単位だけでなく、自分自身にも当てはまっている。

 ポジションを争っているのは、7年間、川崎の正GKとして君臨してきたチョン・ソンリョンである。

「どういう力でもって、そのポジションに居続けたのか、タイトルを勝ち獲り続けたのかは、一緒に練習をして感じるところがたくさんありました。これまで多くのGKと一緒に仕事をしてきましたが、ソンリョンさんは、今まで見たことがないような守り方をするGKというのが第一印象でした。それは、練習の時から、ゴールが入る気がしないという感覚があったからです」

 同じゴールを守って練習したからこそわかる、"すごみ"だった。

「練習メニューのなかには、フィールドプレーヤーがゴールを決めるのが当たり前のようなシチュエーションも多々あります。GKにとっては、シュートを止めるのが難しい状況ですよね。でも、ソンリョンさんは、それでもなおシュートを止める。その姿を見た時、ひとりの存在によって、フロンターレにとってのピンチがピンチではなかったことを知りました。

 自分が今までGKをやってきて、ファインセーブだと思っていたものが、フロンターレでは止めて当然というレベルにある。それはある意味、自分にとってカルチャーショックに近い感覚でした」

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