川崎フロンターレの「絶対的守護神」チョン・ソンリョンとポジションを争う33歳・上福元直人の「異色な経歴」を紐解く (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【酸いも甘いも経験してきた】

 ならば、現状維持ではなく、成長を選んで踏んだ地に、欲していたものはあったのか。

 今度ははっきりと、「はい」と即答した。

「フロンターレが、勝ち続けてきたチームの所以(ゆえん)や、テクニックやメンタリティも含め、すべてにおけるたくましさは、チームに加わったことでわかりました。今季はなかなか結果が出ていない難しい状況にありますが、タイトルを掴んできただけの力を秘めているというか、力が備わっているチームだということは、ひしひしと感じています。まだ加入して半年ですけど、自分にとって吸収できること、成長できるきっかけはたくさんあります」

この記事に関連する写真を見る 今までは、外から見ていたが、中に入って確信に変わったことがある。

「自分の持ち味もビルドアップにありますし、今までもボールを大事にするチームでのプレーを経験させてもらってきましたが、フロンターレには、相手を相手陣内に貼りつけた状態で、得点を奪えるポテンシャルがあることを実感しています。

 これまでのチームでは、ボールを保持していても、相手が引いた状況ではなかなか崩しきることができず、打開するには何が必要なのだろうかと考えていたのですが、そこへのこだわりと答えを持っているのがフロンターレでした。

 今季は結果がついてきていないですが、相手ゴールに迫る迫力やクオリティを秘めている。だからこそ、自分もフロンターレの一員として成長し続けて、そこに貢献していくことが大事になってくる」

 一方で、外から中に加わったから、実感しているチームの課題も見えている。

「近年、勝ち続けてきたチームなので、試合に負けたあと、チーム全体が受けるショックが大きすぎることを感じています。個人的に鬼さん(鬼木達監督)と話した時にも『今まで勝ち続けてきた分、反対の状況になった時のメンタリティについて、切り替えがうまくできないところがある』と教えてくれました」

 そこは酸いも甘いも経験してきた上福元が、チームに還元できることのひとつと言える。

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