ゴールキーパーなのにハードワーク? J3からJ1まで全カテゴリーを経験してきた上福元直人の「プロで生き残る道」

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

上福元直人(川崎フロンターレ)インタビュー後編

◆上福元直人・前編>>「絶対的守護神」とポジションを争う33歳の異色な経歴

 ピッチ上でDFが並ぶ位置を「最終ライン」と表現することがある。ただし、実際はそのうしろには、砦(とりで)とも言うべきGKが構えている。

 今季途中から川崎フロンターレのゴールマウスを守る上福元直人(かみふくもと・なおと)のプレーを見ていると、4バックに彼を含めた5人こそが「真の最終ライン」と表現したくなる。

 それほどに、彼はビルドアップに加わり、攻撃の組み立てに参加している。

 自身の特徴を「攻守におけるハードワーク」と表現するように、攻撃ではペナルティエリアを飛び出し、DFやボランチと頻繁にパス交換を行なっている。また、その姿勢は守備にも積極性となって表れている。

GK上福元直人(かみふくもと・なおと/33歳)GK上福元直人(かみふくもと・なおと/33歳)この記事に関連する写真を見る 2-0で勝利したJ1リーグ第15節の柏レイソル戦だった。14分に相手のプレスによってDFのパスがずれた時には、ペナルティエリアを大きく飛び出してボールを拾い、チームを助けた。一方の33分には、ジョアン・シミッチからのバックパスをトラップミスすると、細谷真大に奪われてシュートを打たれた。

 GKである上福元が攻撃の組み立てに参加しているから起きた事象だった。あわや失点という場面だっただけに、その後、前に出ることを躊躇したり、怖くなったりしても決しておかしくはなかった。

 そのハーフタイムだった。ロッカールームに戻ると、となりに座る小林悠が言った。

「ああいうミスが起こることもあるかもしれないけど、だからといって前に出ることをやめないでほしい。カミ(上福元)のプレーはチームの助けになっているから」

 自分のプレーを貫く後押しになった。上福元は言う。

「一緒にピッチに立っているチームメイトがそういうリアクションをしてくれると、勇気づけられますよね。その姿勢は悠さんだけじゃない。このチームには、チャレンジできる環境がある。だからといって、ミスをしていいかと言われたら、決してそうではないですけど、フロンターレはトライすることを認めてくれるチームなんです」

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