川崎フロンターレの「絶対的守護神」チョン・ソンリョンとポジションを争う33歳・上福元直人の「異色な経歴」を紐解く (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【現状維持は衰退を意味する】

 J1でゴールマウスを守れるようになったのも2年前──徳島がJ1を戦った2021年からだ。昨季在籍した京都では正GKとしてリーグ戦31試合に出場したが、新天地を踏めば、再び競争に身を置くことになる。

「選択肢を与えてもらえなければ、チャレンジすることもできないのですが、自分としては試合を経験することでたくましくなっていくという考えもありつつ、あえて難しい挑戦をして、それを乗り越えた時に、自分の力がついてくると考えています。

 ありきたりな言い回しになりますけど、よく『現状維持は衰退』って言いますよね。僕としてもそのイメージは強く持っていて、常に自分をアップデートさせていくこと、その位置にとどまることなく、自分がどれだけ大きくなっていくかが成長には大切だと思っています」

 試合に出られない苦悩も知っているだけに、不安や怖さはなかったのか──。それでも挑戦する気概を知りたかった。その答えに、彼の原点がある気がしたからだ。

「僕のなかでは、試合に出られない可能性があるというのは、ある意味で当たり前のことだと、どこかで思っています。プロになってからも試合に出られない日々が続き、常に自分に足りないところは何かを考えてきました。

 ある時には、ほかの選手と比較して、自分自身でも単純に自分に力がないから当然な判断だなと感じたこともありました。他人と比べることがすべてではないですが、純粋に比較することで、自分に足りないところを受け入れ、そのうえでどうするかを考えてやってきました。

 もっと言えば、そういう感覚で僕はサッカーをしてきました。ラッキーな出来事やたまたまに近い事象で、出場機会が巡ってくることもあるかもしれない。でも、それを引き寄せているのも、日ごろの自分の行動、姿勢があってこそ。だから、成長し続けなければ、追いつけたとしても、すぐに追い越されてしまうだろうし、上を目指している以上は、常に成長に対する貪欲さを当たり前に持ち続けていたい」

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