川崎フロンターレから消えた「怖さ」 反発力を失った元王者の姿に寂しさを覚えた (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 前半25分までにFC東京が奪った2ゴールは、シュートそのものや、そこに至るプレーに関してはすばらしいものだった。加えて、DF徳元悠平が決めた先制点は、彼にとって記念すべきJ1初ゴール。今季新加入選手の活躍が、チームを勢いづけたことは間違いない。

 だとしても、試合全体のリズムや流れを考えると、川崎が自滅していた印象は否めない。

 鬼木監督が語る。

「自分たちらしさを出したかったが、前半の2失点が重くのしかかった。もっともっと(試合の)スタートからアグレッシブに行かなければいけなかった」

 4度のJ1制覇を知る指揮官は、「それができなかったのは、自分の力不足」と続けたが、理由はともあれ、川崎の選手たちに、どこか淡白で気が抜けたようなプレーが目についたのは確かだった。

 とはいえ、川崎が栄華を誇った頃を振り返っても、すべての試合で90分間、完全無欠の試合をしていたわけではない。むしろ、相手にリードされたあとにこそ、牙をむくのが川崎の怖さだった。

 それを考えると、川崎の不振をより一層強調したのは、ここからの展開だったかもしれない。

 前半25分までにまさかの2失点を喫した川崎だったが、その後は少しずつ本来のリズムを取り戻し始めていた。ボールをリズムよく動かして相手を押し込み、ニアゾーンを攻略してゴール前でのチャンスにつなげる。そんな形が連続して見られるようになっていた。

 そして生まれた追撃のゴール。前半39分、MF瀬古樹からのパスを受けたFW宮代大聖は、そのままペナルティーエリア内に進入。鋭い切り返しで目の前のDFをズラすと、わずかに開いたコースを見逃さず、強烈なシュートをゴールに叩き込んだ。

 ようやく川崎が目を覚まし始めたなかで生まれた会心のゴール。これで川崎は完全に主導権を握れる、はずだった。

 ところが、試合の流れはハーフタイムを挟み、後半開始から再び一進一退、いや、どちらかと言えば、FC東京に引き戻されてしまう。

 確かに後半52分、MF脇坂泰斗が退場となったのは痛かった。最後まで11人対11人で戦えていれば、試合はどうなっていたかわからない。

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