浦和レッズ、ACL制覇の大きな要因 強風のなかで際立っていたGK西川周作のハイボールの処理 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 結果的に、浦和の虎の子1点がFKから生まれた相手のオウンゴールだったように、浦和のゴール前でも何かしらの事故が起きても不思議はなかったはずだが、その気配すら漂うことはなかった。

「風を読むのが難しかったが、自然の力に逆らうのは難しい。来たボールに対処しようと思っていた」

 こともなげに穏やかな表情でそう語る、経験豊富なGKは、「風が強くても慌てることなく、クロスボールも(自分が)出られるボールは全部出てやろうと思っていた」と吐露。とりわけ西川が強調したのは、そのために必要な日々の準備が怠りなくできていたことと、それを可能にした浦和のGKチームの充実ぶりである。

「空中戦に関しては、キャッチがダメな時の解決方法が今のGKチームにはあるので、比較的落ちついて対応することができた。いつも練習でやっていることが今日の試合でも出せたのは、やっぱり浦和のGKは本当にハイレベルな競い合いをしているから。そういったところを表現できたかなと思う」

 試合開始直後の前半4分、こぼれ球を処理しようとした西川は、相手選手と激しくぶつかり、転倒。仰向けに倒れたまま、しばらく動かなかった時はヒヤリとさせられたが、本人曰く、「あの接触で目が覚めた。逆に試合を楽しめたというか、入り込めた」という。

「試合前は、いつもどおりやろうとか、楽しんでやろうと思いながら(試合に)入るが、いざ(ピッチに)立ってみると、やっぱりいろんなプレッシャーを感じている自分がいるのかなあと、試合開始直後は思った」という西川だったが、ひとたび覚醒したあとは頼もしい守護神として、鬼神のごときプレーでチームを救った。

 試合後の表彰式。西川はキャプテンの酒井から、「周作くんと(一緒にトロフィーを)絶対上げたい」と声をかけられた。

 昨季まで浦和のキャプテンを務めた西川は、2シーズンをまたいで行なわれた今大会での栄誉を、最初に浴するに最もふさわしい選手だと酒井は考えたからだ。

「まず宏樹がひとりで上げてよ」

 そう言って、現キャプテンの申し出を一度は断った西川だったが、周りの選手にも背中を押されると、照れながらも全選手の中央に立ち、酒井とふたりで頭上高く、輝くトロフィーを突き上げた。

 大会史上最多となる3度目のACL制覇。6年前の優勝を知るベテランGKの活躍なしに、語ることのできない大偉業である。

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