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サンフレッチェ広島の躍進を先導したミヒャエル・スキッベ監督。選手たちがノリに乗ったその手法を森﨑浩司が解説 (2ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

若手に自信を持たせた言葉

――トレーニング内容は独特な面があったりするんですか?

 それがまったくないんですよ。3チームに分かれてボールポゼッションしたり、シュートゲームしたり、ピッチを狭くして5対5をやったりとか。そうした見たことがあるトレーニングだし、難しいこともしないんです。

 試合の前日練習や紅白戦などは、ヘッドコーチが進めていくんですよ。選手だけではなく、コーチングスタッフのこともすごく信頼していて、自分で全部を仕切るんじゃなくて、任せるところはしっかりと任せているんです。

 スタッフの意見もしっかりと聞きながら決断だけはスキッベさんがして、チームとして結果が出る。そうなるとみんなスキッベさんと仕事がしたいと思いますよね。本当に「理想の上司」だなと思います。

――広島はオフの多さが話題になったことがありましたね。

 オンとオフの切り替えは、必ずしてくれますね。試合後の選手へのフィードバックで、負けた時は「必要以上に落ち込まなくていいから、次に向かって切り替えていこう」と。勝った時は「オフを楽しんで、家族と出かけるもいいし、友人知人とお酒を飲んでもいいし」という雰囲気を作ってくれるんです。

 試合の翌々日もオフになることがあって、スキッベさんにはリカバリーという言葉がないんですよ。そこはすごく興味深いです。

 次の日にちょっと体を動かすとかもなくて、プロだからケアが必要なら各々がしっかりとケアをしなさいと。ケアは全員が必要なわけではなく、必要がないなら自由にしたらいいというスタンスなんですよね。

「試合のあとになにかごちゃごちゃ言われてもうれしくないだろうし、俺の話も聞きたくないだろう」と。オフが多いのは、選手のことが本当によくわかっているんだと思います。

――若手の躍動も印象的でしたが、彼らへの指導で感じたものはありますか?

 若い選手に対して、自信を持たせるような言葉がけをしていたと思います。印象的だったのは、第28節の清水エスパルス戦で劇的な2ゴールを決めた川村拓夢が「ようやく自分の才能に気づいたな、拓夢」と言われたと。それは選手にしてみればめちゃくちゃうれしいですよね。

――川村選手はなにか開放されたように躍動して、重要な場面で点を決めてきましたよね。

 そうですね。彼はもともと力強いプレーができる選手なんですけど、性格が優しくて、少し遠慮がちなところがありました。でも変わったと思います。

 それからケガで離脱中の東俊希も「ケガから復帰したらレギュラーで使うから」と言われたそうです。それはリハビリの励みになるじゃないですか。本当にうまいなと思います。

 細かいところを伝えて伸ばすというより、シンプルな言葉と、自信を持たせて、のびのびとプレーさせて伸ばす。そこが若い選手の成長につながっていると思いますね。

 プレーの選択に関しては若手、ベテラン関係なく尊重してくれて、ああしろ、こうしろという言葉は聞いたことがない。ある程度自由を与えられるので、選手たちは監督を気にしながらプレーしないんですよね。

 そのなかでポイント、ポイントで褒めてくれるので、監督が求めるプレーがどういうものか気づけるのだと思います。

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