サンフレッチェ広島の躍進を先導したミヒャエル・スキッベ監督。選手たちがノリに乗ったその手法を森﨑浩司が解説 (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

コンスタントに優勝争いをしてほしい

――天皇杯、ルヴァンカップでは、2週続けて決勝を戦うというスケジュールでした。天皇杯でJ2のヴァンフォーレ甲府に敗れて、1週間後にルヴァンを戦うのは、メンタル的にかなり難しかったと思います。

 広島はまだカップ戦で優勝したことがない負の歴史がありましたが、天皇杯では絶対に勝てるだろうと。プレッシャーのなかでも自分たちのスタイルを100%発揮できれば、優勝できる自信がありました。

 それで負けたのは本当に悔しかっただろうし、あそこからよく切り替えてくれたと思います。

――天皇杯後にスキッベ監督が選手たちにかけた言葉が印象的だったそうですね。

 そうですね。「天皇杯で優勝カップを広島に持って帰れなかったのは事実だけど、ただ俺たちはカップ自体をまだ持っていない。だから持って帰れなかったわけではない」と。「この過去はもう変えられないけど、未来だけは変えることができる」と。そんな言葉をかけていたと聞きました。

 広島のこれまでの歴史を含めたこの言葉は面白いと思いましたし、自分が選手なら確かに過去は変えられないし、未来に向かって準備しようと思いますね。

 切り替えられた要因はもう一つあって、天皇杯決勝後のオフ開けにようやくサポーターが練習を見学できるようになったんです。選手に聞くとこれも大きくて、サポーターの後押しがすごく力になったと言いますね。

――ルヴァンカップ決勝はどのような思いでご覧になったんですか?

 ルヴァンに関しては、広島は過去に2度決勝まで行かせてもらって準優勝に終わったので、優勝してほしいという願いと、そう簡単には獲れない難しさも知っていて、天皇杯からどれだけ切り替えて戦えるか心配しながら見ていました。

 でもそんな自分の不安を越えていった後輩たちのプレーぶりは、本当に頼もしかったですね。決勝には広島のユース出身選手が5人先発に名を連ねて、改めて広島というチームは育成型クラブであることも証明してくれました。本当にたくましいチームになったと思います。

――最後に来季の監督にどんなことを期待していますか?

 今シーズンは本当にすばらしいシーズンを送りましたが、このチーム力、結果を維持してもらいたいですね。ただ、その難しさは、監督自身が一番わかっていると思います。

 今シーズンの優勝は叶わなかったですが、コンスタントに優勝争いに絡める結果を残し、優勝できるだけのところに持っていってもらいたいですし、持っていけると思っています。また、選手の成長面では、日本代表に選ばれるような選手を輩出してもらいたいですし、それだけの選手が広島にはいると思っています。

 サッカースタイルの面では、今のサッカーの質をもっと上げて、リーグのなかで攻撃的なチームと言えば川崎や横浜FMよりも広島だと認めてもらえるくらいのチーム作りを期待したいです。

――森崎さんがプレーされた、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の攻撃的で魅力的なチームの時代が来る。そんな予感がする今季だったのではないでしょうか。

 そうですね。僕はその時代より上を行っていると思います。若い選手と経験ある選手が健全に競争して、もっと魅力的でレベルの高いサッカーを見せてもらいたいと思います。

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