ヴァンフォーレ甲府を見守って28年。県民みんなで支え続けたからこそ、天から「まさか!」が降りてきた (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 でも、天皇杯優勝は違うでしょ。

 どんなに頑張ってJ1に定着したとしても、天皇杯で優勝するなんて、そんなに簡単なことではない。J1優勝争いを繰り広げるような強いチームでも、獲ろうとしたってなかなか獲れるタイトルでもないし、万が一、未来の甲府がJ1優勝争いの常連になったとしても、「上り坂」のような日常にはなり得ない。これは未来永劫、「まさか!」の記憶になるのだ。

 当たり前だ。天皇杯王者だもの。

 手元にある今年の天皇杯のパンフレットを見ても、歴代優勝チームの欄には、いわゆる"優勝の常連"みたいな強いチームばかりがずらりと名を連ねていて、来年以降、第102回の優勝チームとして「ヴァンフォーレ甲府」という文字がそこに加わるなんて。

 正直、とても恐れ多くて、甲府だけ少し小さい文字にしてほしいくらいだ。

 でも、本当に勝ってしまったのだから、いいじゃないか。だいたいの人の人生は、苦労や大変なことのほうが多いと思うけれど、一度くらいはこういう幸せを味わったって、バチはあたらないんじゃないか。

『80万人の想いはひとつ 天皇杯を甲斐の国山梨へ』

 晴れの大舞台で、北側ゴール裏に陣取った甲府サポーターたちは、試合中にこんなメッセージの弾幕を掲示していた。

 80万人という数字が、他県の人から見てどんなふうに感じるのかはわからないが、もう甲府を離れて、人生の半分以上をこっち(東京)で暮らすようになった身からすれば、かなり低い数字だと思う。東京の人口は、1400万人近いのだから、比べものにもならない。

 でも、あえてそこに「80万人」という数字を入れて、全県態勢でこの大一番に挑んでいることを訴えているところがいいじゃないか。しかも優勝が決まった直後には『クラブ消滅の危機を乗り越え辿り着いた日本の頂 vfkに関わるすべての人に感謝』なんてメッセージに切り替わっていたのだから、もうそれに賛同するしかない。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る