サンフレッチェ広島は負の呪縛から逃れられるか。天皇杯は6度目の挑戦も失敗、ルヴァンカップ決勝は過去2回いずれも逆転負け

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 サンフレッチェ広島にとって、天皇杯は鬼門の大会である。前身の東洋工業時代には3度優勝を果たしているものの、サンフレッチェ広島に変わってからは一度も手にしたことのないタイトルだ。

 決勝の舞台に立ったのは昨季までで5回あるが、いずれも勝つことはできなかった(東洋工業時代も6回敗れている)。しかもすべてが完封負けと、ひとつのゴールも奪えていない。

 印象的なのは、名古屋グランパスエイトと対戦した1999年大会(第79回天皇杯)の決勝だろう。ピクシーことストイコビッチのキックフェイントに翻弄されゴールを奪われたシーンは、天皇杯決勝における広島の負の歴史を象徴しているように思えるのだ。

 リーグ連覇を成し遂げた黄金時代の2013年(第93回天皇杯)も、横浜F・マリノスに完敗を喫している。あれから9年、6度目の決勝に駒を進めた広島だったが、結末はまたしても同じだった。

涙を流す選手をなぐさめる広島のスキッベ監督涙を流す選手をなぐさめる広島のスキッベ監督この記事に関連する写真を見る "初優勝"への機運は高まっていた。

 今季より指揮を執るドイツ人のミヒャエル・スキッベ監督の下、今季の広島はハイプレスを軸に、縦の速さと強度の高いサッカーを確立させた。残り2試合となったリーグ戦では3位と躍進を遂げ、ルヴァンカップではファイナル進出を決めた。

 そしてこの第102回天皇杯でも勝負強さを示し、準決勝では京都サンガF.C.を延長戦の末に下して、例年とは季節の異なる決勝の舞台に駒を進めている。

 対戦相手は、J2で下位に沈むヴァンフォーレ甲府である。J1の3位とJ2の18位。その力関係を考えれば、悲願成就は決して難しくはないように思えた。

 実際に立ち上がりの5分を見るかぎり、広島が負けるとは思えなかった。球際の争いやプレー強度に、明らかな格差があったからだ。

 決定機こそ作れていなかったとはいえ、相手陣内でプレーする時間が長く、よほどのことがないかぎりはやられることはない。このまま続けていけば得点も生まれるだろうし、セットプレーとカウンターへのリスクマネジメントさえ怠らなければ、自ずと結果は手に入る。そう思わせる立ち上がりだった。

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