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サンフレッチェ広島は負の呪縛から逃れられるか。天皇杯は6度目の挑戦も失敗、ルヴァンカップ決勝は過去2回いずれも逆転負け (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Nikkan sports/AFLO

唯一無二のシナリオで敗北

 しかし、時間が経つにつれ、甲府も広島の強度に慣れてきたのか、隙を見て前に出る機会を作っていく。15分過ぎあたりからは広島のプレスをうまくかいくぐり、背後のスペースを突くプレーも増加。対する広島は甲府のよもやの反撃に後手を踏み、イージーなミスも散見して、嫌な時間が続いていった。

 そして26分、甲府のデザインされたセットプレーに翻弄され、先制点を献上。これにより広島は、一気に苦しい状況に追い込まれてしまった。

「そこからすごく難しい展開になってしまいました。(甲府は)5−4でブロックを組んできたので、(広島が)ボールを持っていましたけど、なかなか崩すのが難しい状況だった」

 広島の司令塔、野津田岳人はそう振り返った。

 たしかにボールは支配したが、チャンスは作れなかった。昨季は期限付き移籍でプレーした"古巣"の対応を崩せなかったことに、野津田は悔しさを隠せなかった。

 後半、広島はさらに攻勢を強め、ほとんどの時間帯を相手陣内で過ごした。

 甲府が前への圧力を弱めたこともあって、前半よりもゴールに迫る機会は増えている。ところがスペースのない状況では、今季の広島の特長である縦に速い攻撃を仕掛けられなかった。遅攻で崩すには精度とアイデアが足りず、甲府の守りを打ち破るには至らなかった。

 そんな苦境を打破したのは、個の力だ。1点ビハインドで迎えた84分、後半からピッチに立ったエゼキエウが個人技で切り崩すと、川村拓夢が角度のない位置から目が覚めるようなシュートを突き刺し、同点に追いつくことに成功する。

 しかし、勝ち越すには時間が足りず、延長戦ではチャンスを作りながらも決め手を欠いた。そしてPK戦では、同点弾を決めた川村が失敗。おそらくは実力上位チームが敗れる唯一無二のシナリオで、甲府に史上最大の下剋上を許した。

「負けた我々としては、ここまでの戦いが思い出として残るだけ」

 タイトルを手にできなかった以上、ミヒャエル・スキッベ監督の言葉がすべてである。

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