ヴァンフォーレ甲府が天皇杯制覇。J2・18位のチームが奇跡を起こすことができた3つの要因

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

「日本一、スゲぇ......」

 奇跡を起こした選手たちに群がる報道陣の山を前に、広報スタッフが思わず漏らしたひと言が微笑ましい。2部リーグに身を置くクラブにとって、それがどれほど日常とはかけ離れた世界だったかは想像に難くない。

 日本サッカー界で「三冠」と称されるメジャータイトルのうちのひとつ、天皇杯を今季制したのは、J2のヴァンフォーレ甲府。2部リーグのクラブがカップ戦の頂点に立つ、まさかまさかの番狂わせだった。

天皇杯で優勝を飾ったヴァンフォーレ甲府天皇杯で優勝を飾ったヴァンフォーレ甲府この記事に関連する写真を見る 過去にもJ2クラブが天皇杯で優勝した例は、2011年シーズンのFC東京がある。

 だが、当時のFC東京はJ2を圧倒的な強さで制し、すでにJ1昇格が決まっていた、いわば"準J1クラブ"。それに対して今季の甲府は、J2でも18位(天皇杯決勝開催時。以下同)に位置するクラブだ。

 そのうえ、3回戦以降はコンサドーレ札幌(2-1)、サガン鳥栖(3-1)、アビスパ福岡(延長戦2-1)、鹿島アントラーズ(1-0)と、すべてJ1勢を下しての決勝進出。番狂わせの度合いという意味では、11年前の衝撃を大幅に上回る。

 決勝で対戦したサンフレッチェ広島は、現在J1で3位。今大会で甲府が対戦した相手のなかでは最も格上だったわけだが、「一戦一戦、いいゲームをして勝ってきたので、今日(決勝)が特別ではない」とFW三平和司。J2からやってきたチャレンジャーは臆することなく、広島に立ち向かった。

 J2・18位の甲府がJ1・3位の広島を退け、頂点に立つことができた要因として挙げられるポイントはいくつかあるだろう。

 まずは、早い時間の先制点だ。

 延長戦も含めた120分間で、甲府が主導権を握って試合を進められたのは実質、前半の45分間だけ。しかし、言い方を変えれば、そこでの戦いはほぼ完璧なものだった。

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