ヴァンフォーレ甲府が天皇杯制覇。J2・18位のチームが奇跡を起こすことができた3つの要因 (2ページ目)
相手DFラインの背後へ送るロングボールを使って広島を後ろ向きにさせ、そこからセカンドボールを拾って、パスをつなぐ。しかも、押し込む展開を続けるなかで得た最初のCKを、見事に得点までつなげて見せた。
「練習でもあんなにうまくいかない。プランどおりだった」
前半26分に値千金の先制ゴールを決めた三平がそう語っていたように、CKのボールを一度下げてからニアゾーンに進入するスペシャルプレーは、事前の練習から用意されたものだった。
公式記録によれば、前半、後半、延長前半、延長後半の4つの時間帯のうち、シュート数で甲府が広島を上回ったのは前半だけ。さらに言えば、この試合で甲府が得たCKは前半の2本がすべてだ。
いかに甲府が限られた自分たちの時間を有効に生かし、効率よく広島にダメージを与えたか。その事実は数字にもはっきりと表れている。
そして、ふたつ目のポイントとなったのが、同点に追いつかれたあとの試合展開だ。
「(広島に)点はとられると思っていたので、『追いつかれても大丈夫だから』と(選手同士で)言っていたが、84分(の失点)というのは結構キツかった」
そんな三平の言葉どおり、1-0とリードしながら勝利目前で同点に追いつかれたことは、甲府の選手たちに相当なショックを与えたに違いない。気落ちして足が止まり、さらに失点を重ねる。こうした試合展開のなかでは、決して珍しくない結末である。
ところが、起死回生の同点ゴールで勢いづくはずの広島は、「畳みかけてこなかった」(三平)。
なぜなら、広島のMFエゼキエウが同点ゴール直前のプレーで右足を負傷。広島はすでに交代枠を使い切っていたため、走れないエゼキエウを前線に立たせたまま後方でボールを動かし、時間をやり過ごすことを選んだからだ。
延長戦に入れば交代枠がひとつ増える。そこでエゼキエウに代わる選手を投入し、延長戦勝負――。そんな先を見越した広島の判断は、しかし、甲府の選手たちを落ち着かせることにもつながった。
時間にすれば、およそ10分程度。広島にとっては不運な時間を過ごすことになったと言うしかないが、結果が出た今となっては、勝敗を分ける10分間になったのではないだろうか。
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