アジアナンバー1を目指しながらACL第一で臨めなかったヴィッセル神戸の悲しい現状 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 前の試合で横浜FMに勝ったあとも、山口をはじめ、神戸の監督や選手の口から「この勢いをリーグ戦につなげたい」という主旨の発言が聞かれたのは、ACLを戦っていても、やはりJ1での心配事から頭が離れなかったからだろう。

 そもそも、今季ACLでの神戸は「プレーオフ、グループリーグ、決勝トーナメントと全部監督が違うし、戦術も選手も変わっている」(DF槙野智章)という"惨状"のなか、試合をこなしてきた。

「チームとして何が優先順位が高いかと言ったら、もしかしたらACLよりJリーグかもしれない」

 槙野がそうも話したように、アジアの頂を本気で目指す準備が整っていたとは言いがたい。一時はJ1最下位に沈んでいたことを考えれば、むしろACLでのベスト8進出は出来すぎと言ってもいいのだろう。

 それどころか、夏の移籍で加入した新戦力が活躍し、J1首位の横浜FMを破ってのベスト8進出である。いいイメージを残してJ1再開につなげられるなら、今の神戸にとっては決して悪くない結末なのかもしれない。

 幸か不幸か、準々決勝敗退に終わったことで、神戸は次の試合(J1第28節京都サンガ戦)まで11日間のインターバルができた。吉田監督も「再開は9月3日なので時間がある。しっかりレストを与え、トレーニングを積んで切り替えていければ」と語り、すでに視線をサバイバルレースへと向けている。

 神戸は現在、J2自動降格圏と勝ち点差2の16位。J1生き残りをかけた戦いは、9試合を残すのみだ。

 アジア制覇の夢破れた神戸を待つ本当の試練は、これからが本番である。

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