アジアナンバー1を目指しながらACL第一で臨めなかったヴィッセル神戸の悲しい現状 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 4日前に横浜FMを下した試合では、多少アバウトなボールを前線に送っても、大迫がどうにか収めてくれる(収められないまでも、簡単には相手ボールにさせない)ことで、神戸は攻撃の時間を作り出し、相手に主導権を握らせなかった。

 日本代表でも最前線に立つストライカーが攻撃のカギを握っていることは明らかであり、全北現代のキャプテン、DFキム・ジンスも、神戸との対戦を前に「10番(大迫)を分析していた」と振り返る。

 ところが、その大迫が全北現代戦では先発どころか、ベンチ入りメンバーからも外れた。最近の大迫はコンディションの問題により、出ては休んでの繰り返しが続いていたことを考えれば、想定内の出来事とはいえ、痛い大黒柱の欠場だったことに違いはない。

 同じく、この試合でベンチからも外れたMFアンドレス・イニエスタも含め、準決勝に勝ち進めば出られる状態にあったのか? と問われた吉田監督が「明言は避けたい」と答えたように、大事をとって休ませたというより、使いたくても使えなかったというのが、実際のところだろう。

 しかしながら、前の試合からメンバーを大きく入れ替えるという判断自体は、必ずしもおかしなものではなかった。

 相手の全北現代が先発メンバーをひとりしか入れ替えなかったため、"メンバーを落とした"ことが神戸の敗因であるかのようにも映るが、それはあくまでも結果論。もし控え組中心のメンバーで勝つことができれば、チームの士気は上がるし、主力組はよりよいコンディションで次の準決勝を迎えることができる。

 むしろメンバーを大きく入れ替えるという決断には、決勝へ進めないのであれば、どこで負けても同じ。そんな潔さがうかがえる。

 ただ、それが潔い印象ばかりを与えてくれないのは、神戸が現在、J1で極めて苦しい立場に置かれているからに他ならない。

 要するに、J2降格危機にあるクラブはACLどころではないのだろう。そう見えてしまうのだ。

「アジアナンバー1という目標を掲げるうえでは、ACLは重要な大会だが、そこに余裕を持って臨めるほどリーグ戦で結果が出ていない。いい順位で臨めれば、気持ちが違うが......」

 悩ましげにそう話していたのは、MF山口蛍である。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る