西川周作が衝撃的だったGKコーチの否定。「イチからすべてやり直している」守護神に何が起きたのか (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

GKコーチと衝撃的な出会い

 GKとして基礎から実戦に至るまで、イチからやり直す契機となったのは、今シーズン、浦和のGKコーチに就任したジョアン・ミレッとの出会いにあった。

「今までいろいろなGKコーチの指導を受けてきましたが、指導者の型に当てはめる人もいれば、選手のやり方を尊重してくれる人もいました。フィジカルトレーニングひとつ取っても、コーチによってやり方はさまざま。なかには今まで培ってきた自分の経験から、感覚で身につけてきた部分もありました。

 でも、ジョアンに出会って、今まで気づけなかったものにたくさん気づくことができたんです。だから毎日、発見があって楽しいですね」

 自分自身でも成長を実感しているのだろう。「楽しい」の言葉のあとには、やはり満面の笑みが広がっていた。

 シーズンが始動する前、ミレッGKコーチの就任を知った西川は、事前に情報を集めていた。FC東京での指導経験があることから、林彰洋に話を聞いたのである。『どういう人なの?』と尋ねると、真っ先に返ってきたのは、『最初は講義だよ』というコメントだった。

「林選手からは、話は長いかもしれないけど、それを理解して取り組んでいけば、どんどん楽しくなっていくから、という言葉をもらっていました。だから、覚悟して練習に臨んでみたら、まあ、最初は本当に講義でしたね。初日の練習では、ピッチに入っても50分くらいは立ったまま、まさに講義を受けて、体を使ったトレーニングは10分、15分くらいでした」

 第一声から背筋が伸びる思いだった。

「今までやってきたことをリセットしてくれ。頭のなかですべてを忘れてくれ。これから自分が伝えていくことをイチから吸収していってもらえたら、今よりもっといいGKになれる」

 プロとして17年間積み上げてきたもの、もっと言えば少年時代から培ってきたものをリセットしてほしい。西川が「衝撃的だった」と表現するのもうなずける言葉だった。

 ただ、西川は「頭を切り替えて、一度、すべてを学んでみよう」と考えた。

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