広島スキッベ監督の冴えわたる手腕。既存選手の能力を最大限に引き出して勝つ、理想的な地方クラブ像

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 すでに終盤に差しかかった今季のJ1で、ポジティブな驚きをもたらしているのが、柏レイソルとサンフレッチェ広島の2チームだろう。

 前者は昨季、残留争いに巻き込まれ、後者も11位と、ふたケタ順位にとどまった。しかし、今季は残り10試合の時点で、柏は2位、広島は6位と上位争いを演じているのである。

 その両チームが8月14日に柏の本拠地で激突した。さすがは好調を維持する上位対決である。互いに持ち味を発揮し、多くのゴールが生まれた白熱の好ゲームが繰り広げられた。

広島を飛躍させたドイツ人のスキッベ監督広島を飛躍させたドイツ人のスキッベ監督この記事に関連する写真を見る 試合は時間帯によって、流れが行き来する一進一退の展開となった。

 開始早々に広島が精度の高いセットプレーで先制したものの、その後は柏が反攻を仕掛け、前半終了間際に武藤雄樹のゴールで追いつくと、後半立ち上がりにはオウンゴールを誘発し、逆転に成功する。

 ところが今度は広島が圧力を強め、61分に松本泰志が豪快なミドルを叩き込むと、67分には右からの藤井智也のクロスがゴールに吸い込まれ、3−2と再逆転。そのまま逃げきった広島が4連勝中の柏の勢いをストップし、逆転で敗れた前回対戦のリベンジを果たしている。

「技術的にも戦術的にも、すごく魅力的なサッカーができた」と広島のミヒャエル・スキッベ監督が胸を張れば、「技術的な部分でも戦術的な部分でも、劣っていたとは思わない」と敗れた柏のネルシーニョ監督も、自チームのパフォーマンスを好意的に評価した。

 奇しくも両指揮官が同様のコメントを残したことからも、この試合の質の高さがうかがい知れるものだ。

 常に世界のサッカーのトレンドに目を配り、アップデートを繰り返しながら昨季低迷したチームを蘇生させたネルシーニョ監督もさることながら、やはり焦点を当てるべきは勝った広島のスキッベ監督の手腕だろう。

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