西川周作が衝撃的だったGKコーチの否定。「イチからすべてやり直している」守護神に何が起きたのか (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

過去の教えを真っ向から否定

 果たしてミレッGKコーチの指導は、それほどまでに積み上げてきたことをリセットしなければいけないものだったのか。聞けば、西川は大きく首を縦に振った。

「キャッチングの仕方、ボールの弾き方、ボールを弾く場所......いっぱいあるんですけど、倒れたあとの起き上がり方、ポジショニングと、何もかもが違いました。でも、こちらが『何で?』という質問をすると、『なぜなら』という明確な『答え』や『理由』を必ず持っていて、いつもはっきりと提示してくれるんです。

GKである自分からしてみると、ひとつひとつのプレーに対して解決方法を教えてくれるので、プレーするうえで精神的にも余裕が持てるようになりました。だから、たとえばボールをキャッチできずにこぼしてしまったとしても、こぼしたあとのリカバリーもできる。足の運びや起き上がり方も徹底してきたことで、一度でボールを取れなかったとしても慌てなくなりました」

 たとえば、キャッチングである。

「僕がGKとして最初に指導を受けた時のキャッチングは、こうだったんですよ」

 そう言って西川は、画面越しに手の平を広げ、両手の人差し指と親指をそれぞれ合わせて三角形を作ってみせた。

「子どものころ、この三角形を作るように言われた記憶があります。でも、それだと面は大きいんですけど、ボールを掴んではいない。少しでもボールが横や縦にずれたりすると落ちてしまうと、ジョアンは言うんです」

 シーズンが始動した序盤には、キャッチングのテストがあった。ミレッGKコーチが投げたボールをキャッチする簡単なものだったが、キャッチすると「No」と、はっきり言われた。西川は今日まで培ってきたものを真っ向から否定されたのである。

「そこでまた『なぜなら』という答えがあるんです。ジョアンは手を開くのではなく、ボールを包み込む感じで、小指を閉じるようにと指導してくれました。手を開いてキャッチすると、相手と競り合ってぶつかった時にボールを落としてしまう可能性があるから、自分から掴みにいったボールを手にはめ込む感じでキャッチするようにと言われました」

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