元レフェリー・家本政明が忘れられない、規格外の外国人Jリーガー。「いつも楽しそう」「まさにバケモノ」な選手たち (2ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

ゲームをコントロールできる存在

ロブソン・ポンテ(MF/元浦和レッズほか)

 ロブソン・ポンテ選手は、浦和レッズの黄金期を支えた選手のひとりです。

 彼の魅力はなんと言っても、ゲームを動かす力が圧倒的に高かったこと。味方へのすばらしいパスでチャンスメイクするのはもちろん、自らゴールも奪える。また、ゲームが慌ただしくなってきたら、彼にボールを集めて落ち着かせることもできました。

 そうやって、チームやゲーム自体を自在にコントロールしていたようなイメージを強く持っていた選手の筆頭でした。

 レフェリーなので一方を贔屓にしたり、有名な選手だけを大切にしたり、そうではない選手を邪険にするといったことはありません。でも彼のような中心選手を、相手チームは当然、激しいチャージなどで狙ってきます。そこは絶対に守る必要性があると思っていました。

 見る人や応援する人を魅了するだけのテクニックがあって、ゲームを動かせる力のある選手は稀有な存在です。そこを正当なチャージではなく、つまらないファールによってつぶしてしまうのは、イコール試合をつまらなくすることにつながります。

 だからポンテ選手の場合も、汚いプレーをしてくる相手に対しては、丁寧かつしっかりと対応していました。また、ファールを受けることで彼の意識がプレーではなく、レフェリーに向いてしまわないように、どうレフェリングでカバーできるか考えながらやっていましたね。

 でも彼はそういう汚いプレーさえもかいくぐって、チャンスを創出して、自らもゴールを決められる本当にすごい選手でした。そうした時のスタジアムのボルテージは最高潮に上がりますし、相手にとってかなりの脅威だったと思います。彼が創り出す素晴らしい空間はレフェリーとしてもすごく心地いい空間でした。

 そんなポンテ選手との間で思い出深いのは、2010年の最終節ヴィッセル神戸戦です。たまたま割り当てられたんですが、その試合の前に彼の浦和退団がメディアに出ていたんです。それで彼が試合終了間際に交代で下がる時に、わざわざ私のところへ来て握手をしてくれました。

 彼が少し目をうるませながら、まだプレーをしたい感傷に浸る雰囲気のなかで、握手を求めてきてくれたのはうれしかったですね。選手とレフェリーという立場でしたが、彼とはいい関係が築けていたのかなと思えた瞬間でした。

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