OBの岩政大樹が鹿島アントラーズに抱いている危機感。「アップデートできているのかが問われている」

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • photo by J.LEAGUE

短期連載:「鹿島アントラーズの30年」
第4回:「岩政大樹が振り返る2021シーズンとアントラーズの未来」
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 今年創設30年目を迎えた鹿島アントラーズ。Jリーグの中でも「すべては勝利のために」を哲学に、数々のタイトルを獲得、唯一無二のクラブとして存在感を放っている。

 その節目となる年にあたり、クラブの歴史を独自の目で追った単行本『頂はいつも遠くに 鹿島アントラーズの30年』が発売された。それを記念し、本の内容を一部再構成・再編集したものを4回にわけてお届けする。第4回は「岩政大樹が振り返る2021シーズンとアントラーズの未来」。

 上田綺世のゴールでホーム最終戦に勝利した鹿島アントラーズ 上田綺世のゴールでホーム最終戦に勝利した鹿島アントラーズ クラブ創設30周年のアニバーサリーイヤーとなった今季、タイトル獲得を目指した鹿島アントラーズ。4月には監督交代を実施し、相馬直樹がチームを率いたもののタイトル獲得には至らなかった。3連覇という偉業を成し遂げたチームの一員だった岩政大樹氏は、「今の時代にあった鹿島らしさの再構築が急務だ」と鹿島の課題について語る。

――クラブ創設30周年の今季をどんなふうに見ましたか?

「30年周年を迎えるにあたって、なにかしら象徴的なことが起きるだろうなと思っていました。タイトルを獲って、この30年がすばらしかったというふうになれば良いなと。けれど、無冠で終わりました。2020年シーズンにザーゴ監督を招聘し、変わろうとしたけれど、それができなかった。何を変えるかというのが明確に定まっていなかったようにも見えます」

――「試合の主導権を握るチームに」というのが、クラブの目指すところだったと思います。よく比較されるのが、2007年から三連覇したオズワルド・オリベイラ監督率いるチームです。あのチームの特徴はどのようなものでしたか?

「選手たちそれぞれの個々の能力が高く、自立した選手、流れを読める選手が揃っていました。試合に応じて臨機応変に阿吽の呼吸で戦えるチームです。戦術家というより、選手の精神面をうまくコントロールするのに長けたオリベイラがバランスをうまく整えていたと思います」

――戦い方という意味では選手主導だったと。

「そうですね。それは鹿島がどうこうというより、世界的に見ても、よい選手を集めて、選手たちの発想や個々の能力をすり合わせることでサッカーを作るというのが一般的な時代だったから。

 当時、登場したペップ(ジョゼップ・グアルディオラ)のサッカーはまだ一般的ではなく、特殊だと言われていましたが、そこからヨーロッパのサッカーは変わっていくことになります。だから、今、鹿島が変わらなければいけないというのは、変わってしまった世界のサッカーに追いついていくということだと思うんです。

 そこで必要になってくるのは、何をもってして、鹿島らしさとするかということだと思います。昔は感覚値で受け継ぐことができたけれど、選手の入れ替わりが激しくなった今、きちんと明文化、言語化して、鹿島らしさを伝えていかなければいけない時代だと感じています」

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