大久保嘉人、Jリーグ最終戦での熱いメッセージ。「うまい選手しかいなくなった」
12月4日、清水。大久保嘉人(セレッソ大阪、39歳)は、清水エスパルス戦でJリーグ最後のピッチに立っている。試合前、体幹トレーニングから2人1組でボールを触り、淡々と体をほぐす。最後だからといって、ウォーミングアップから感傷的になって「ひとつひとつ丁寧に」などというタイプではない。
「試合に入った瞬間、スイッチが入る」
大久保は言う。
真剣勝負の場で、ほとんど別人格になる。相手が誰であろうと容赦はしない。何者かに変身するのだ。Jリーグラストマッチも変わらなかった。ミスからボールを失ったら、猛然と敵を追いかけ、意地でも前に行かせない。勝負への執着は模範的ではなく、狂気的だ。
ペナルティエリア内で浮いたボールに対して、ゴールに背を向けていたことから、瞬間的判断で体を浮かせたオーバーヘッドで強引に狙った。側に相手選手がいて、ヘディングで処理しようとしていたことから、足を蹴り上げるのを躊躇する選手もいるだろう。しかし、大久保は本能のままに体を動かしていた。
「最後くらいはおとなしく」
ピッチの大久保に、そんな道徳感は通じない。20年以上、彼はそうやって生きてきた。
清水エスパルス戦でJリーグ最後の試合を戦った大久保嘉人(セレッソ大阪)この記事に関連する写真を見る Jリーグで前人未到の3シーズン連続得点王に輝き、J1歴代最多得点記録を誇る大久保とは何者なのか。大久保は国見高校での華々しい活躍があるし、若くして日本代表に選ばれ、海も渡っている。それだけに、サッカーエリートのように映るかもしれない。しかし、彼は逆境を乗り越えることで強くなってきた。
「『プロになりたい』っていうのはJリーグができてから、ずっと思っとって。でもはっきり言って、『無理やな』と思っとったね」
大久保はそう回顧していた。
「国見中の時、確かU-16に2人選ばれていたんやけど、俺は県選抜さえも落ちてた(笑)。そんなヘタくそがプロとか、ましてや日本代表や海外でプレーするなんて考えられんかった。これはあり得んなって。高校も1年は"応援部"。レギュラーは2年の途中からで、それも先輩が事情でサッカー部を辞めたからやけんね。
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