大久保嘉人、Jリーグ最終戦での熱いメッセージ。「うまい選手しかいなくなった」 (2ページ目)
いつサッカーを辞めてもおかしくなかった。でも、どんなに考えてみても、俺にはサッカーしかなかった。なんか、『おまえにはサッカーしかない』という声がどこかから聞こえたような気がするんよ」
大久保はその声を疑わなかった。その声はもうひとりの自身の叫びでもあったのかもしれない。体がバラバラになりそうになるまで練習に打ち込むと、終わった時、ひとつ乗り越えた気がした。試合では全てをかけて戦った。それをひとつひとつ重ねてきた。
「サッカーは遠慮なんかしとったら、絶対にうまくなれん」
大久保は荒っぽい言葉で、プレーヤーとしての流儀を説明していた。
「仲良しじゃ、チームも強くなれんね。その考え方は、絶対に変わらんと思う。負けたら自分は終わり。そうやって追いつめられたほうが、俺は力を出せる。成功した時、サッカーは驚くほど達成感がある。もちろんダメやったら、ずしっと重いもんが心に覆い被さってくる。どっちかよ。でも、勝った試合は自分の力になるし、その感覚は言葉にならん。それがあるから、やめられんって思うよ」
ピッチに入ったら、自然とスイッチが入るようになった。感覚が研ぎ澄まされた猛獣に近い。野生とも、無心とも言えた。そのおかげで、彼は怖がられるアタッカーになった。
清水戦も、存分にその異能を見せた。
前半35分だった。左から清武弘嗣が蹴ったCK、大久保はファーでディフェンスの裏をとっていた。ボールの軌道を見極め、やや体勢を崩しながらも、右足ボレーでインパクト。ゴールに向かって折り返した形になって、際どいボールを清水の選手が処理できず、ゴールネットを揺らした。
「記録する人が空気を読んでくれたら」
大久保は冗談めかして言ったが、判定はオウンゴールで、通算192得点目は幻となっている。特筆すべきは、彼が抜け目なくプレーをアジャストさせていた点だ。
「(シュートは)風が強く、合わせるのが難しかった。でも、ゴールへ折り返せば、何か起こると思って。まあ、自分が打ったシュートが、オウンゴールにつながったわけだし、サポーターの目の前で喜べたのでよかったかなと。最高にいい形で締めくくれたと思います」
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