森保ジャパンのコーチが唸ったオシムのマネジメント「すごく選手思い」 (6ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 オシムのもとで3年間、フィジカルコーチを務めた松本は2006年、トップチームを離れ、アマチュアのジェフクラブ、ジェフと提携していた立正大、さらにはユースのフィジカルコーチを歴任した。オシムとの別れについては、プラスに捉えていたという。

「オシムさんのもとで勉強したことをどこかでアウトプットしないとダメだと思っていたので、いいタイミングだと思いました。その点はポジティブでしたね」

 そのあとジェフを離れ、アビスパ福岡、サンフレッチェ広島のフィジカルコーチとしてキャリアを積んだ松本は、サンフレッチェで一緒に仕事をした森保一監督に請われ、現在は日本代表チームのフィジカルコーチを務めている。

「オシムさんからすると、僕はいつまでも若造だと思うので、『お前がそんなポジションにいるのか』って驚かれるかもしれませんね」

 そう言って笑った松本は、サッカーに対する感性や指導者としてのセンスこそ、オシムから最も学んだものだと語った。

「面白い練習がフォーカスされていましたが、私はフィジカルコーチなので、練習メニューより、指導者としての感性ですね。オシムさんのもとでその大切さに気づけていなければ、たぶん指導者として終わっていたと思います。選手のどんなところを観察したり、どのタイミングでどんな声を掛けたり、アメとムチの話もそうですけど、"指導者とはなんぞや"という哲学的なところを学ばせてもらいました」

 サンフレッチェ時代に3度のリーグ制覇を経験できたのも、今、日本代表チームで森保監督を支えているのも、オシムからの影響を含め、松本が学んだものを咀嚼し、自分なりの方法論へと昇華させてきたからだろう。

 松本は日々、指導者として邁進している。2021年の東京オリンピック、2022年のカタールW杯で日本代表チームを躍進させるために――。

(第8回につづく)

■松本良一(まつもと・りょういち)
1974年7月9日生まれ、福岡県出身。中京大学体育会サッカー部の選手として活躍したのち、1999年に大正大サッカー部でフィジカルコーチとしてのキャリアをスタート。2003年から3年間は、ジェフのトップチームでオシムを支えた。その後、大学やJクラブで活動し、2018年から日本代表のフィジカルコーチを務める。

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