黄金世代・南雄太が語る「未来がない」ベテランと「1本で泣く」GKの境地
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ゴールマウスに立った時、彼らは豹変する。
「自分をテレビで見た時が一番驚いたな。画面に映る自分は、自分ではないようだった。まるで違う性格、違う能力を宿したような......。どう形容すべきかわからないけど、とにかく別人に見えた」
世界最高のGKだったイケル・カシージャスに、「あなたを一番驚かせた選手は誰ですか?」と聞いた時の返答である。彼はどんなストライカーにも驚かなかった。変身した自分に一番、驚いていた。
GKはミスが許されず、「無理だ」と思われることをやってのけなければならない。やってのけたとしても、スポットライトが当たることは少なく、ゴールの歓喜に埋もれる。それでも、彼らは死力を尽くす――。それは英雄的で、狂気的だ。
「GKは強気じゃないと、やっていけないところはありますね。シュートしても入らなそう、必ずゴールを守ってくれる。敵味方にそう思わせたら、勝ちかもしれません」
41歳になるGK南雄太(横浜FC)は言う。
2020年シーズンは12試合に出場した南雄太(横浜FC) 柏レイソルで12シーズン、ロアッソ熊本で4シーズン、そして横浜FCで7シーズン。ほとんどのシーズンを、レギュラーGKとして過ごしてきた。そしてプロ23年目、約10年ぶりにJ1に戻った。まさに、不撓不屈のキャリアだ。
2017年シーズン、南は膝裏のケガで苦しみ、1年をほぼ棒に振っている。足をしばらく動かせず、まずは椅子から立ち上がるのがリハビリだった。階段の上り下りで四苦八苦。室内から出ていないので、肌が白かった。
「自分と向き合うようになりましたね」
南は静かに言う。
「ハムストリングの故障で足が細くなっていた若手が、練習ですぐに身体を戻していて、当たり前ですけど、(なかなか治らない)自分はベテランなんだなって。でも、若い頃よりも駆け引きはできるようになりました。『自分のためだけに』というプレーが、今は家族を含めてたくさんの人に支えられてきたのがわかって、それが力になっていますね」
どん底にいても、彼は前を向くことができた。
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