レアルで先発抜擢、ミス連発、お払い箱...第2GKという生き方
守護神たちの光と影(1)
今シーズン、Jリーグではゴールキーパーの"地殻変動"が起きた。世代交代の境目だったこともあるだろうが、コロナ禍の過密日程で、GKもターンオーバーが敷かれることになった。これまでセカンドGKとしてベンチに控えていた選手が、先発の機会を得たのだ。
鹿島アントラーズのルーキー、沖悠哉は開幕前まで3番手のGKだったが、今やレギュラーをつかんだだけでなく、リーグで注目のGKと言える。FC東京の波多野豪はJ1リーグデビューを飾ると、日本代表歴のある林彰洋の牙城を揺るがす存在になった。そして2019年王者の横浜F・マリノスやアジアチャンピオンズリーグで躍進したヴィッセル神戸は、複数のGKをシャッフルし、競争力を高めていた。
「GKはピッチに立つことで、守護神に変身できる」
それは真理として語られる。経験が大事ではあるが、それを得ること自体が難しい。それ故、彼らは狂気を宿すのだが――。そんな彼らの実像に迫った。
レアル・マドリード時代のアントニオ・アダン。現在はスポルティング・リスボンでプレーする セカンドゴールキーパー。そんなポジションは存在しない。しかし、あるような錯覚を与える。
手が自由に使えるという特権を持ったGKは、たったひとりしかピッチに立つことはできない。試合でひとりのGKが出場すれば、もうひとりが立つ機会は限られる。よほどのミスを連発するか、続けられないほどのケガを負うか。つまり、同僚の悲運を待つしかない。チームスポーツの一員として矛盾を抱える存在だ。
それがセカンドGKの実像だ。
GKは、フィールドプレーヤーのように交代出場の機会を得ることはできず、ひとりが定着するケースが多い。実力者で試合経験も豊富なGKに、それが乏しいGKがどうやって機会をつかむのか――。新天地を探し求めるか、控えに甘んじて牙を研ぎ続けるしかない。賭けに出るか、辛抱強くなるか。彼らは岐路に立つ。
そんなGKの浮沈を世界にさらけ出したのは、ポルトガルの名将ジョゼ・モウリーニョ(現トッテナム・ホットスパー)かもしれない。
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