黄金世代・南雄太が語る「未来がない」ベテランと「1本で泣く」GKの境地 (2ページ目)
◆韓国人GKに代わって、若手日本人GKが台頭し始めた理由>>
2018年シーズンには、守護神として復活を遂げている。チームを3位に押し上げ、昇格プレーオフに進出した。しかしあと一歩のところで及ばず、失意に暮れてもおかしくなかった。"これだけ頑張ったんだから"と自分を慰め、終焉に向かったとしても、責められる人間などいないだろう。
しかし南はあきらめずに挑み続け、翌年、悲願だった昇格を成し遂げた。
「目の前のことに精一杯なだけですよ」
そう語る南は、円熟の境地に入った。
「1本1本を大事に、とは心がけていますね。1本で泣く。それがゴールキーパーだと思っているので。守りの選手は、そういうところがあります。例えばディフェンスがラインを10回上げた時、カバーリングも10回、丁寧にやるべきなんですが、『今回はいいや、どうせ(ボールは)出ない』と1回さぼると、それで不思議に失点するんですよ。ぼやかすと、レベルが上に上がるとやられる。GKは運というか、タイミングというか、めぐりあわせはあると思いますよ。チャンスが来て、それをつかめるか......」
GKを続けるほどに、基本に帰るようになった。単純なパス練習も、どちらの足にボールをつけたら、次のプレーをしやすいか、それを習慣づけた。その小さな蓄積が、試合で潮目を変えるビッグセーブにつながるのだ。
「あれは仕方なかったよ、と言ってもらえる失点の場面があるじゃないですか。でも、自分は試合の中で、その決定機を止めたい、と思っています。それをやってこそ、自分のGKとしての価値が出てくる」
そう語る南は硬骨の人だ。2020年シーズンもJ1で12試合に出場している。
「この世界、35歳を過ぎると、調子が悪い、というのはありません。落ちた、劣化したとされ居場所はなくなります。だから、ピッチで価値を見せ続けるしかない。1試合ミスなく勝った、その一瞬だけは張り詰めたものを緩められますね。でも、自分たちベテランは『未来がない』と思われているから、目の前の今を戦い続けるしかない。気づいたら、ずっとそんな感じですよ」
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