12年間一緒。中村憲剛のアドバイス力に登里享平が最も感銘を受けた点 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「自分もヒザをケガした経験はありますけど、半月板だったので、憲剛さんが負傷した前十字靱帯と比べたら、そこまでの大ケガではなかったと思うんです。それでも結構、引きずったんですよね。それだけに前十字靱帯断裂となると、正直、復帰するにあたってあまりいいイメージを持っていませんでした。

 だから、きっと、憲剛さんもプレーヤーとして無理が利かなくなって以前のパフォーマンスが出せないまま引退していくのかなって。でも、あの人は違った。むしろ、自分のなかでは、中村憲剛というプレーヤーが凄みを増して戻ってきていたんです」

 中村が約10カ月ぶりにピッチに立ったJ1第13節の清水戦で、自らの復帰を祝うゴールを決める姿を見たからこその思いだった。目の前でその勇姿を見せつけられ、登里はよぎっていた不安が杞憂だったことを確信した。

「試合はもちろん、練習を見ていても別格というか。研ぎ澄まされているというか。今シーズン、ウチは4-3-3にシステム変更しましたよね。憲剛さんは、それに対する練習期間もほとんどなかったのに、システムを理解していたし、自分のストロングポイントを出せていた。立ち位置だけで、相手を動かしてくれる選手なんて、まずいない。サイドバック(SB)としてプレーしていて、本当に助かるなと思ってばかりだったんです」

 登里は、高校時代も、それこそ川崎に加入したばかりのころも、SBではなく、サイドアタッカーとしてプレーしてきた。その彼が、3回目のJ1優勝を成し遂げた今季、影のMVPと称されるまでの左SBに登り詰めた背景には、中村との邂逅があった。

「SBに定着する前、1列前でプレーしている時は、憲剛さんとあまり話をしていなかった。というか、アドバイスはもらっていたけど、あまり理解できていなかったんですよね。でも、SBとしてプレーするようになってから、自分の立ち位置で相手を動かすことの効果を教えてもらったんです」

 ポジショニングひとつで、相手を動かし、チームが、自分が優位に立つ。今シーズン、とくに見られた登里の光るプレーだった。それだけではない。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る