12年間一緒。中村憲剛のアドバイス力に登里享平が最も感銘を受けた点
チームメイトが語る中村憲剛
(1)登里享平
中村憲剛が引退を発表し、現役最後の瞬間が迫ってきた。スポルティーバでは、川崎フロンターレのチームメイトたちにインタビュー。常に先頭に立ってチームを引っ張ってきた中村との思い出や、彼に対する思いを語ってもらった。
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目を見て話しをすれば、涙がこぼれてしまいそうだったから、視線を合わせられなかった。いや、厳密に言えば視線を合わすことができなかった。
チームメイトとしては最長の、12年間一緒にプレーしてきた中村憲剛と登里享平 川崎フロンターレの登里享平が、中村憲剛から今シーズン限りでの引退を聞いたのは、11月1日に行なわれた記者会見よりも前だった。
「広報の人からちょっと来てくれって、いつも取材で使っている部屋まで呼ばれたんです。試合告知や、商品の宣伝用の動画を撮影するお願いかなと思って部屋に入ったんです。そうしたら、すでに憲剛さんが座っていて、今までにない空気が漂っていた。その瞬間に、いつもと違うなというのはわかりました」
対談であれば、事前に内容を知らされているはずだ。登里の頭は、まるで試合中かのようにフル回転した。
「もしかしたらドッキリか何かかな」
思わず、部屋にカメラが仕掛けられているのではないかと見渡した。
「でも、座った時に憲剛さんの顔を見たら『あっ』という直感はありました。だから、その話かもしれないと思った自分もいて。それで憲剛さんが話しはじめたら、やっぱり聞きたくなかった言葉で、次の瞬間、頭が真っ白になりました」
あまりの衝撃で何を話したかは覚えていない。ただ、多くの人が中村に対して抱いたように、登里も「まだ、できるじゃないですか」「まだ、やってほしい」と伝えた。
「憲剛さんがいることで、チームもそうですけど、自分も成長できるんです。だから......」
登里が香川西高校を卒業して川崎に加入したのは2009年。気がつけば、チームメイトとしては最も付き合いの長い12年になっていた。
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