遠藤保仁の影に敗れたアビスパ福岡。首位陥落も昇格へチームは熟成 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 長田洋平/アフロスポーツ●写真 photo by Yohei Osada/AFLO SPORT

 優勢だった福岡だが、41分、巧妙に自陣ゴール前で小川にファウルを取られてしまう。接触はあったが、やや不運な判定だったか。そして遠藤が蹴ったFKは、ゴール前に飛び込んだ中川創の頭にピタリと合った。中川の手はジャンプする前にエミル・サロモンソンの肩にかかっており、微妙な判定が重なったとも言えるが......。

「遠藤さんから完璧なボールが来ました。練習で見て(精度は)わかっていたんで、信じて飛ぶだけでした」(磐田・中川創)

 もっとも、この時点で福岡はまだまだ挽回できた。遠藤のひと蹴りにやられた形だが、あくまでセットプレーだった。

「後半、早々に自分たちが取り返しにいこうと話していたところで、10分以内に同点に追いついて振り出しに戻したら、と思っていました。でも、いけない時間帯に失点してしまった」(福岡・長谷部茂利監督)

◆「遠藤だけじゃない。現役続行、黄金世代の今」>>

 後半5分、福岡は再び失点を喫する。

 後半開始早々から攻勢を強めていたが、前がかりになってバランスが悪くなっていた。クリアボールを拾った遠藤に中盤でボールを運ばれ、攻め上がっていた左サイドバックの輪湖直樹が右サイドまで遠藤を追走する。ボールは一度、左に出され、遅らせることはできた。しかし遠藤は少し上がるそぶりを見せた後、バックステップを踏み、これに輪湖が引き寄せられる。

 この一瞬、中盤のインサイドがガラ空きになって、そこをドリブルで持ち込まれる。悠々と左サイドへボールを展開されると、そこは輪湖が抜けたポジションで、もう磐田の独壇場だった。センターバックが釣り出されてパスを入れられ、あとは小川に右足を振り抜かれ、ブロックした足に当たり、ネットが揺れた。

 遠藤の影に守りが崩れたと言える。バックラインは、何もフィルターがない状態で攻撃を受けると脆い。それはほぼ失点と同義である。瞬きする間に、そんな状況ができてしまったのだ。

「遠藤はゲームを予測し、読むことができます。いろんな経験をし、味方を生かすことができる。ピッチでもコーチングし、ドタバタせずにプレーさせられる。あえて急がず、時間を作るのもうまい」(磐田・鈴木政一監督)

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