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目指すスタイルは魅力的だったが、
エスパルスの挑戦は跡形なく終わった (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 もちろん、背後を狙うこと自体が悪いわけではない。相手がコンパクトな布陣で高い位置からプレッシングにくれば、それを逆手にとるのは正しい戦略だ。

 しかし、そもそも「背後を狙う」と対になるべき「つなぐ」というベースの部分がなくなってしまったのでは、意味がない。

 まして、名を捨て実を取る、ならまだしも、第17節に湘南ベルマーレから1勝を挙げただけで、第18節からは再び5連敗を含めた、7戦勝利なし(2分け5敗)。これでは何も残らない。

 柏戦では、特に前半、確かに得点機はあった。しかし、それらはいずれも単発な攻撃によるもので、それゆえ、高い位置でボールを奪い返すこともなければ、連続攻撃で主導権を握るような時間もなかった。

 後半に入り、むしろ清水が理想としたはずのサッカーを展開していたのは、柏のほうだった。ネルシーニョ監督が語る。

「後半は距離感やトライアングルがよくなり、ポゼッションでボールを握ることができた。選手個々の技術、チームの戦術も含めて、いくつか得点が生まれそうなチャンスを作った」

 こうなってしまうと、本当に清水の挑戦が正しい方向へ進んでいるのか。そんな疑問は大きく膨らむ。

「これ(無失点の守備)をベースに、攻撃面でプラスアルファを出さないと、相手の脅威にはならない。これではカウンターだけのチームになってしまう」

 金井が口にしたそんな言葉に、真理が隠されているのではないだろうか。

 クラモフスキー監督は、「重要なのは、自分たちのサッカーをしっかりやることだ」と強調し、「(柏戦では)それを相手のホームでしっかりとやった。試合をコントロールしてチャンスも作れた。(結果よりも)そのことが大事だ」とも話していた。

 しかしながら、この試合を見る限り、クラモフスキー監督の言う「自分たちのサッカー」がシーズン当初から掲げていたものを指すのか、この試合のために準備してきたものだけを指すのか、釈然としなかった。

 就任1年目途中での指揮官解任も、やむを得まい。

 興味深く、かつ好感の持てる挑戦だっただけに、残念な結末だった。

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