目指すスタイルは魅力的だったが、
エスパルスの挑戦は跡形なく終わった (2ページ目)
今季の清水はクラモフスキー監督を迎え、新たなスタイルの構築に取り組んできた。すなわち、自らボールを保持して相手を押し込み、徹底して主導権を握るサッカーである。
それは、開幕5連敗を喫してもなお、変わることなく貫かれていた。事実、第6節からの5試合では、2勝3分けと成績は向上。果敢な挑戦の成果は、結果にも表れてきたかに思われた。
ところが、雲行きが怪しくなってきたのは、その後、第11節から7連敗を喫したあたりからである。
3点以上を失う試合が増えるなかで、クラモフスキー監督は、従来の4バックから3バックへとシステム変更を選択。状況の打開を図った。
もちろん、指揮官自身も話しているように、システム上の"数字"は大した問題ではない。実際、システム変更と言っても、本来ボランチの選手を3バックの中央に置くケースが多く、サッカーのやり方自体を大きく変えたつもりがないことをうかがわせる。
しかしながら、一番の問題はピッチ上で繰り広げられるサッカー自体に、悪い意味での変化が生じていたことである。システム変更で予想以上に重心が後ろに下がった清水は、DFラインからパスをつないで攻撃を組み立てようにも、後方でボールを横に動かすばかりで、縦パスを入れられない。結局、早いタイミングで相手DFラインの背後や、サイドのスペースを狙うしかなくなっていったのだ。
それは、4-3-3に戻された柏戦でも大差がなかった。以下のネルシーニョ監督の言葉が参考になる。
「(清水は)ハイテンポで攻撃を仕掛けてきた。前半は、(センターフォワードの)カルリーニョス・ジュニオをターゲットに長いボール入れてくる時間が続いた」
とりわけ気になったのは、選手がミスやボールロストを恐れているように見えたことだ。
周りの選手が積極的に顔を出そうとしないから、パスコースができない。パスコースができないから、ボール保持者はパスを出せずにプレッシャーを受ける。時折縦パスが入ったとしても、受けた選手は怖がってすぐにバックパスしてしまう。
敵将が言う「ハイテンポな攻撃」も、長いボールを蹴るしかなかった、という消極的な側面があったことは否めない。
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