今季のFC東京はひと味違う。柔と剛の新戦力が見せた個の力 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio


 そこには技術や戦術、組織力といったサッカーに求められる要素はなかった。必要だったのは、体力と気持ちの強さ、そしていくばくかの幸運だっただろう。ゆえに両者の力関係は、実際のそれよりも拮抗した。まさかの事態が起こる可能性は十分にあったのだ。

 それでも、勝ったのはFC東京だった。スコアレスで迎えた後半立ち上がりにチャンスを確実にモノにすると、終了間際にカウンターから加点。終わってみれば2−0の快勝劇で、ACLの出場権を手にしている。

「とりあえず、よかったです」

 開口一番、長谷川健太監督は安堵の言葉を漏らした。

 今季の初陣で、勝利のみが求められる一戦だ。しかもFC東京はこの試合で、新機軸である3トップのシステムを採用している。昨季の躍進の立役者となったディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑が不在のなか、3トップに入ったのはふたりの新戦力と、J1での実績のない20歳の若手である。

 不確定要素があまりにも大きいなか、悪コンディションというさらなる不安要素が加わったのだから、重圧は小さくなかったはずだ。そのなかで勝利を手にしたという意味では、FC東京のしたたかな一面を垣間見た試合だった。

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