矢板中央「谷間の世代」が大バケ。
「技術がない」けど懸命さで4強入り (2ページ目)
とりわけ風上に立った前半は、矢板中央の独擅場だった。
相手の縦パスをことごとくつぶし、シンプルなロングボールで背後を突く。12分に2年生ストライカーの多田圭佑がクロスに合わせて鮮やかな先制ゴールを奪うと、20分には再び多田が相手のミスを突いて2点目をマーク。風下となった後半は四中工に押し込まれる展開となったが、人数をかけた守備で隙を与えず、ゴールを許さなかった。
テクニックの部分では、四中工のほうが勝っていただろう。しかし、プレー強度や運動量、あるいは戦う姿勢で上回ったのは矢板中央のほうだった。
「彼らの成長はびっくりしますね。長年指導者をやっていますけど」
1994年からこのチームを指揮する高橋監督は、驚きを隠せないようだった。
「決していい選手はいない。代表選手もいない。全国に出ることが目標だった。それが年越しできて、まさか(準決勝の)埼スタまで行けるとは思っていなかった。うまくいかなかった選手たちがここまでがんばってくれる姿に感動しています」
劇的な成長を続ける選手たちの姿に、指揮官は感無量の様子でそう話した。
「最後まであきらめない、高校サッカーらしい選手ばかり」
高橋監督が言うように、矢板中央の強みはその精神力にあるのだろう。相手にボールを持たれても粘り強くしのぎ、ボールを奪えば一気に前へと走り出す。足りない技術は、球際の争いや走力、そして団結力で補っていく。そのひたむきな姿勢こそが矢板中央の快進撃の要因であり、それは高校サッカーの本質でもある。指揮官は言う。
「技術がないのは選手たちも認めているところ。とにかく走り負けないひたむきさを、去年より意識してやってきたことが、ここへきて実を結んだと思います」(高橋監督)
もちろん、メンタルだけではない。大会を通して成長してきたポイントは、守備面に見出せる。県大会の4試合すべてで失点し、全国の舞台でも失点が続いていた。しかし、3回戦で完封勝利し、この準々決勝でもクリーンシートを演じた。
2 / 3