2020.01.06

矢板中央「谷間の世代」が大バケ。
「技術がない」けど懸命さで4強入り

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 まだ発展途上にある高校年代では、突如、周囲の予想をはるかに超えるほどの急成長を遂げることがしばしばある。今大会の矢板中央(栃木県)は、まさにそのケースに当てはまるだろう。

 なぜなら、彼らは栃木県予選を勝ち上がるのもギリギリだった「無印」のチームだったからだ。

四中工戦で2ゴールを決めた2年生の多田圭佑 3年連続10回目の出場と、矢板中央は全国でも名の知れたチームである。2009年と2017年には4強入りを果たし、昨年も8強まで駒を進めている。近年の高校サッカー界ではコンスタントに結果を出しており、その実績を考えれば優勝候補に挙げられても不思議ではない。

 ところが、メンバーが揃っていた昨年とは違い、今年はタレント不足が否めず、周囲からは「今年は難しいだろう」という評価を受けていたという。実際に栃木県予選では薄氷の戦いが続き、決勝ではPK戦の末に勝利を収め、からくも全国の舞台へと駒を進めている。

 プリンスリーグ関東でも10チーム中10位と、最下位に終わった。プリンスリーグ関東を制し、選手権の優勝も狙えた昨年のチームと比べれば、どうしても見劣りしてしまう。いわば彼らは”谷間の世代”だったのだ。

「去年はメンバーも揃っていたし、日本一を狙っていた。今年は去年出ているメンバーがひとりもいないので、誰もが難しいだろうと思っていた」

 高橋健二監督がそう評すように、周囲からの期待度は決して高くはなかった。

 しかし、全国の舞台で彼らは、下馬評を覆す快進撃を披露する。1回戦で大分(大分県)をPK戦の末に下すと、2回戦では大手前高松(香川県)を2-1で撃破。3回戦では鵬学園(石川県)に2-0と快勝を収め、3年連続でベスト8進出を果たした。

 そして迎えた準々決勝。相手は2度の選手権優勝を誇る名門・四日市中央工業(三重県)である。高い攻撃スキルを備えたMF森夢真(ゆま)を擁するテクニカルなチームに対し、矢板中央は強度の高い守備から鋭い攻撃を仕掛け、相手を押し込む戦いを実現した。