サンフレッチェ広島は若返った。
平均約30歳のレッズとは対照的 (3ページ目)
指揮官も、連敗中の戦いをネガティブに捉えていたわけではなかった。
「我々の直近5試合は、自分たちの手応えと勝ち点が、どうしても一致しなかった。受け入れるのが非常に難しい、ここ5試合でした」
何もできずに失速した昨季終盤の苦境と、手応えを掴みながらも結果がついてこなかった今季の5連敗。結果は同じように見えて、その中身はまるで異なる。その意味で、今季の広島は危機的状況に陥っていたわけではなかった。
昨季との違いをさらに紐解けば、「若返り」というキーワードが挙げられる。森島だけでなく、日本代表に選ばれたGK大迫敬介とMF松本泰志、さらにはU-20ワールドカップに参戦中のMF東俊希、大卒ルーキーのDF荒木隼人ら、20歳前後の若手たちが主力として試合に絡んでいる。
それには、ACLでの好結果も無視できない。広島はこのアジアの戦いで若手を積極的に起用し、グループステージの首位通過を成し遂げた。そのなかでアピールに成功した森島や荒木が、リーグ戦のメンバーに食い込んできている。
「ACLは、リーグ戦とはメンバーを変えて臨んでいました。ただ、ACLでがんばった選手は必ずリーグ戦のメンバーに割り込んでくると信じてやってきた。今日の彼(森島)の活躍は、ACLのメンバーに非常に多くの刺激を与えたと思います。この競争こそがチームの生命線なので、シーズンの中盤で強固なチームを作るためにも、彼の活躍はひとつの大きなトリガーになる」
指揮官が言うように、今季の広島には絶対的なレギュラーが存在しない分、正当な競争が生まれており、若手が成長できる環境が整っているのだ。
ボランチの川辺や、この日はメンバーから外れたMF野津田岳人も、20代前半のタレントだ。ここ数年、世代交代という難題を突きつけられてきた広島だが、ようやくそのテーマがいい形で現実のものとなっている。
平均年齢30歳近い固定メンバーでACLとリーグ戦との両立に挑み、季節外れの暑さのなかで苦しんだ浦和のパフォーマンスとは、あまりにも対照的。3度の優勝を成し遂げたメンバーは少なくなったが、新たな時代を築こうとする若手が自らの存在を主張し、躍動する――。現在のサンフレッチェ広島の理想的な状況に、大きな希望を感じとった。
3 / 3