2019.05.27

トーレス抜きの鳥栖劇場。戻ってきた
伝統の「固い結束」で3連勝

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

「夢のようだ」

 この日、サガン鳥栖のストライカーである豊田陽平は、試合終了間際の決勝点を叩き込んだ心情をそう表現した。

 その言葉にはさまざまな意味が込められている。長年、チームを支えるエースだったが、信頼を与えることができない日々が続いていた。鳥栖の歴史を作ってきたひとりとして、もどかしさも募った。その中で雄々しいゴールを決め、再び歓喜をもたらした。

「鳥栖というクラブは、最後までみんなであきらめずに勝利をつかむのがいいところ。一体感というか、”お互いのために”という献身性というか、その大切さを伝えていきたい。それが勝利にも伝統にもつながる」

 豊田はその胸の内を洩らしていた。

「鳥栖らしさ」――この日は、その宴になった。

鹿島アントラーズ戦で劇的な決勝ゴールを決めた豊田陽平(サガン鳥栖) 5月26日、駅前不動産スタジアム。17位の鳥栖は本拠地にアジア王者、鹿島アントラーズを迎えている。

 4-4-2のシステムを組んだ鳥栖は、前線の2トップがしつこくプレスをかけ、鹿島にビルドアップの自由を与えない。レオ・シルバ、三竿健斗という中盤の2人との通路を遮断した。

 一方で意図的にロングボールを蹴り込む。長身でヘディングを得意とする豊田が跳び、相手センターバックの体力を消耗させるように競り合う。また、金崎夢生は裏やサイドに流れることで、センターバックの脚を使わせた。

「(相手が得点力のある鹿島だけに)守備から入ってくれ、と伝えました。鳥栖としては前の2トップのストロングを使いながら、そのこぼれを拾い、粘り強くプレーを続けて、セカンドボールをいい形で拾えましたし、前向きで持ってカウンターも仕掛けられたと思います」(鳥栖・金明輝監督)

 5月から鳥栖の指揮を執るようになった金監督は、それまで10試合で得点わずか1と、最下位に沈んでいたチームを、窮地から救いつつある。

 金監督は現役時代、選手として鳥栖でプレー。指導者としても鳥栖のU-18監督として結果を残してきた。昨シーズン終盤は残り5試合で采配を任され、チームを奇跡的に降格から救った。鳥栖のスピリットを知る指揮官が、プレーコンセプトを回帰させた。