2019.05.29

イニエスタだけではダメ。神戸「バルサ化」に足りないものは?

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

福田正博 フットボール原論

■アンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキ、そして今季からダビド・ビジャを加えた『V.I.P.』で、開幕から大注目のヴィッセル神戸が低迷している。大金を投じた強化がうまく進まない神戸について、元日本代表の福田正博氏が考察した。

 開幕から神戸の指揮を執ったフアン・マヌエル・リージョ監督が4月17日に解任され、昨年も指揮を執った吉田孝行監督が再び就任した。だが、リージョ前監督のもとで7戦3勝1分3敗の10位だったチームは、吉田体制に移行後に上昇気流をつかめず、カップ戦も含めて公式戦9連敗。J1第13節で湘南に勝利して連敗を脱出したが、不振に喘いでいる。

イニエスタ擁する神戸だが、苦戦が続いている 神戸は「バルサ化」を掲げ、イニエスタを獲得した。しかし、選手の役割はクラブに哲学を浸透させることではなく、さらに言えば、組織をつくる力も権限もない。イニエスタにできることは、自らがプレーしていたバルサというクラブの哲学をピッチ上で表現することなのだ。彼が育ったクラブであるバルセロナの哲学を神戸に浸透させ、構築・継続していくのは、監督やクラブ幹部、そしてすべてのクラブスタッフの仕事である。イニエスタがフィールドの外でもすべてをやってくれるわけではない。

 プロのサッカークラブとは、会長やGM、強化担当やスカウトらクラブの幹部はもちろん、スタッフ全員でそのクラブの哲学を築いていき、その方針をもとに選手を育成・獲得していく。それが、クラブの歴史と伝統となり、強化にもつながる。

 その最初の一歩が、優秀な監督に長期間継続して指揮を執ってもらうことだろう。たとえば、アレックス・ファーガソン監督の指揮下で多くのタイトルを獲得したマンチェスター・ユナイテッドは、監督の方針をクラブが十分理解したうえで、選手獲得にも大金をかけてチーム強化を長年継続していき、結果を手にしてきた。

 Jリーグでは名古屋グランパスが、そうしたアプローチでチーム改革とクラブの強化を進めつつある。昨年はJ2降格の危機に陥りながらも、風間八宏監督の手腕にかけ、現体制の継続を決定した。そして今季、名古屋は上位争いを続けている。

 では、神戸はどうかといえば、大金をかけてバルサの哲学を知る選手を連れてきたあとに、その選手を率いるにふさわしいとクラブが判断した監督が就任したものの、すぐに交代させてしまった。クラブはもっと長期的な視野に立って辛抱強く監督をサポートすることも検討すべきだったのではないか。マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラや、リバプールのユルゲン・クロップほどの手腕を持つ監督でさえ、就任1年目は苦労していた。どんなに優秀な監督であっても、ある程度の時間は必要だ。