大分をJ1昇格に導いたトレーニング「ライフキネティック」の可能性 (2ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文・撮影 text & photo by Sato Kazuyoshi

 それでも、間違いなく手応えを感じる部分はあったという。

 ライフキネティックのメニューを実施することで、選手たちがリラックス効果を得ることができたのだ。2月5日に行なわれた、新加入選手とアカデミーコーチを対象としたライフキネティックの体験会でも、選手たちは真剣ながらも和気あいあいとした雰囲気の中でトレーニングをこなしていた。

 サッカー以外の要素をメニューに盛り込むことで、選手たちにとっては気分転換にもなり、シーズン中では「プレッシャーがかかった試合に、リラックスした状態で臨めたことは大きかった」と安田コーチは話す。

 トレーニング自体も、取り入れるのはさほど難しくない。5日の体験会で行なわれたメニューは、黄色・青・緑の3色のボールを使ったトレーニング。参加者数名で輪を作り、はじめは黄色いボールをひとつ使い、「国の名前を言いながら」投げて渡していく。一度出た国名を他の選手が言うことは禁じられていて、ボールを投げる時に口にした国がそれぞれの選手に割り当てられる。

 黄色いボールをしばらく投げ合ってそれぞれの国名を全員が覚えたら、青のボールを追加。青のボールを投げる際は、その相手の国名を言わなくてはいけない。そして、最後に追加する緑のボールを投げる際には、その相手以外の国名を言ってボールを受けた選手が「次にボールを渡す選手」を指定する。このように条件が違う3色のボールが目まぐるしく飛び交うと、自分が次に何を言ってボールを投げればいいか瞬時に判断することが難しく、脳が混乱してしまうのだ。

 それが、ライフキネティックにおいてもっとも重要なポイントだ。

 ボールの色を認識し、その条件が何だったかを思い出して相手に投げる、という複数の動作を同時に行なうことで、脳を最大限に活用することができる。それを何度も繰り返していけば、認知機能や視覚機能を高めることができるのだ。

 とくにサッカーにおいては、「眼球運動」「瞬間視」「周辺視野」といった視覚機能が重要になるため、目と脳と身体の連携を高めることはプレーに大きな影響を及ぼす。

「視野を鍛え、同時に体で表現することがパフォーマンスレベル向上につながる」。それが、ライフキネティックが示す脳科学理論なのだ。

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