ベンゲルに届いた巨大なオファー。名将がグランパスを去る日がきた (4ページ目)
アーセナルの監督に就任が決まり、地元メディアの取材を受けるベンゲル photo by Getty Images
ベンゲルのラストマッチとなる第21節のレイソル戦以降、11月30日の最終節まで9試合を残すのみ。優勝争いが佳境を迎える時期の指揮官交代が、チームに大きなダメージを与えるのは明らかだった。
チームを去るベンゲルは、「選手たちは精神面で大きく成長し、自信をつけたと思う。今までやってきたことを続けることが必要だ」とメッセージを送った。それだけではない。新監督であるカルロス・ケイロスへの引き継ぎがうまくいくように、自らの右腕であるコーチのボロ・プリモラツを、年内はグランパスに残すことにしたのだ。
「ただ辞めるんじゃなくて、そういう細やかさが最後までありましたね」と、平野孝はしみじみと振り返る。
9月28日、グランパスはベンゲルのラストゲームを勝利で飾ることができなかった。
1-1の同点で延長戦に入った前半3分、相手選手のミスキックとなったセンタリングが、そのままグランパスゴールに飛び込んだのだ。その瞬間、レイソルのVゴール勝ちが決まり、ベンチの前でベンゲルは呆然と立ち尽くしていた。
終幕はあっけなく訪れ、試合後にはベンゲルの退任挨拶が行なわれた。
「みなさん、ありがとう。グランパスのサポーターのことは忘れません。私はいつまでも名古屋のことを愛しています。Thank you very much!」
サポーターに日本語で語りかけたベンゲルは、記者会見で「Good luck! フランス・ワールドカップで会いましょう」という言葉を残すと、翌朝、6時のフライトでロンドンへと旅立っていった。
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