2016年MVP、中村憲剛という
「サッカー人」を創った3人の恩師 (3ページ目)
「ただ、高校入学当時、身長155cmくらいしかなくて、背の小さかった自分が、どうやってプレーしていくかを、そこで考えるようになった。山口先生には『おまえは小さいんだから、とにかく頭を使いなさい、考えてプレーしなさい』って言われました」
自らを「コンプレックスの塊だった」と話す中村は、考えることで長所を伸ばし、短所を克服していった。「それでも、監督が自分に何を求めて、自分がどうするべきか、方向性を定めたかったので、その後も疑問があれば、遠慮なく聞きにいきましたけどね」と、中村はまた笑ったが、この恩師との出会いが大きく成長するきっかけになったのは言うまでもない。
「当時の自分は、さながら沈没寸前の船のようでした。それが本当にちょっとした運というか、出会いに恵まれて変わった。だから、すべては自分次第。考えてやれば、ここまでいけるんだよ、MVPも獲れるんだよってことを、今、当時の自分と同じ悩みやコンプレックスを抱えてサッカーをしている子どもたちに伝えたい。大事なのは置かれた環境の中で、自分自身がどう取り組んでいくかなんです」
高校時代にサッカーを、自分自身を諦めなかった中村が、次に名前を挙げたのが、中央大学のときに指導を受けた佐藤健コーチ(当時)だった。
「フロンターレとの架け橋になってくれた人。健さんがいなければ、僕はプロの世界に入っていなかったと思います。大学3年生までの僕は、関東選抜にも選ばれたことがないような選手で、もちろんユニバーシアードの日本代表にも選ばれるようなこともなかったですからね」
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