2016年MVP、中村憲剛という「サッカー人」を創った3人の恩師 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 最優秀選手賞は、1年の活躍が評価されてのものではあるが、中村が示す感謝は、36年に及ぶ彼の人生に関わったすべての人に贈られた言葉でもある。本人は、「数え切れないくらい感謝したい人がいる」と話すが、その中でも彼の分岐点に携わり、未来へと導いてくれた5人の"恩人"を強いて挙げてもらった。

 考えはじめて、すぐに名前が出てきたのが、都立久留米高校時代の恩師・山口隆文監督だった。

「今の中村憲剛の土台を作ってくれた人ですからね」

 そう言って、彼は高校時代に思いを馳(は)せる。

「中学生のときは本当に何もかもうまくいかなくて悶々(もんもん)とした日々を過ごしていたんです。だけど、高校サッカーに憧れていたので思い切ってやりたいなと思って、自分の実力をいろいろと考えて久留米高校に入学しました。僕は、昔から何でもすぐに答えを求めたがる生徒で、少しでも気になることがあると、『これ、どうすればいいんですか?』『あのときはどうしたらよかったんですか?』って、今思えば、自分でも『うるさいヤツだな』って思いますけど(笑)、聞いてしまう習慣があったんですよね」

 久留米高校のサッカー部でプレーするようになってからも、中村はいつものように山口監督に質問した。だが、恩師からの返事は、中村がまったく予想もしていないものだった。

「自分で考えろ」

 中村は「たまたま忙しかったのかもしれないですけどね」と言って笑う。

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