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日本サッカーを支える巨大施設に込められた、元教師の「部活への思い」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki

 実はこの阿部さん、時之栖にやってくる前は高校サッカー界の名将だった。

 奈良県の下北山中学で教員生活をスタートさせた阿部さんは、その後、同県の県立大淀高校に赴任。そこでサッカー部の顧問を任された。だが、阿部さんにはサッカー経験がなかった。当時のサッカーに対する印象は「退屈でおもしろくない」。それでも次第に「足でボールを扱うサッカーはミスの多いスポーツだから、誰にでもできる」と、その魅力にハマり、のめり込んでいった。

 サッカー未経験ながらも、大阪商業大学サッカー部の上田亮三郎監督(現・総監督)に教えを請うなど、指導のイロハを学んでいった阿部さん。それまで無名だった大淀高校を、4年後には奈良県大会で優勝するまでに育て上げた。

 高校選手権には第57回大会で初出場を果たすと、そこから3年連続出場。結局、17年間の在職中に、高校総体、国体と合わせて22回も同校を全国大会に導いた。

 そんなキャリアを持つ阿部さんが目を光らせるからこそ、施設の運営は常に現場目線、使用者目線で行なわれている。たとえば、自身がサッカー部の監督を務めていた時代は、どこで練習や合宿を行なうにしても、土埃が舞うグラウンド脇で弁当を食べなければならず、初めての場所だとトイレの場所もよくわからない。そんな不便を感じることがよくあった。

 そのような経験から、阿部さんは「安心、安全、便利」をモットーに、時之栖の運営に携わっているという。

「大事なのは、食べること、寝ること、サッカーをすること。だから、ここではサッカーをするだけでなく、腹いっぱい食って寝られるようにしてあげたい。合宿や試合で来た人たちが、成果に満足して帰ってもらえるような施設にしたい」

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