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日本サッカーを支える巨大施設に込められた、元教師の「部活への思い」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki

 阿部さんとともに、時之栖誕生当初から施設運営を行なってきた、スポーツセンター長の阿山恭弘さんによれば、「先生(阿山さんは阿部さんのことをそう呼ぶ)は自分が監督時代に欲しかったものをここに作っている」。
 
 なるほど、まさにその通りである。阿山さんは「今後もそのコンセプトは崩してはいけないと思っている」と語る。阿部さんは元教員らしく、「日本の学校の部活はすばらしい。世界に類を見ない仕組みだ」と言う。だが、その一方で、部活の現場をよく知るからこそ、「学校の設備は手狭で混雑していて、部活同士で反発が起こる」という実態も理解している。

 だから、「ここに来たときくらいは、雨でグラウンドが使えないなどということなく、思いきりサッカーをしてほしい」。それが阿部さんの願いだ。実際、落雷の恐れがある場合は使用を中止させるが、それを除けば「本人たちがやめると言わないかぎり、こちらから使うなとは言わない」。

 そんな阿部さんは、「施設を他種目にも広げていきたい」と今後の夢について語る。たとえば、陸上競技の投てき種目。同じ陸上でもトラック種目と異なり、投てきは練習場所を確保するのが難しい。グラウンドが痛むという理由から、陸上競技場はなかなか使わせてもらえないのが現状だという。「だから、投てき専用の施設を作ってやりたいんです」と阿部さんは言う。

 また、長年の経験から「いい選手ほど若いときに、ケガをしても無理にプレーしている」と感じている阿部さんは、「そこで勉強もしながら、集中して治療とリハリができるような医療設備が作れないか」と考えている。他に類を見ない、充実した巨大スポーツ施設を作り上げてもなお、阿部さんの夢はまだまだ尽きることがない。

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