磐田・名波浩監督が激白「リアクションサッカーはしない」 (5ページ目)

  • 渡辺達也●構成 text by Watanabe Tatsuya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

――さて、来季についてですが、セレッソ大阪、大宮アルディージャという実力クラブがJ2に降格してきて、一層厳しい戦いが予想されます。率直にどんな心構えでいるのでしょうか。「来季は見ていろよ」といった感じですか。

名波 もちろん。とはいえ、言われたとおり、来季はセレッソ、大宮、そして徳島ヴォルティスが加わって、既存の京都サンガやジェフユナイテッド千葉なども補強をしてチーム強化を図ってくるだろうから、一段と熾烈さが増すと思う。そういう意味では、今季以上に厳しい戦いになることは間違いない。その中で勝ち抜いていくことは、決して簡単なことじゃないと思っている。

――厳しい戦いを勝ち抜くために、何か秘策などは用意しているのですか。

名波 選手の入れ替えはほとんどないし、ガラッと何かを変える、ということはしない。それをやったら、選手がまた迷ってしまうからね。それでも、新たな血(選手)が入ってくるので、今あるものから、着実に肉付けはされていく。そこから生まれた新たな組み合わせによって、新たな武器も出てくるんじゃないかな。とにかく、ベースはあるし、やるべきことが浸透していけば、チームのレベルは確実にアップするはず。

――来季は当然、結果も求められると思います。そのためには、何をやっていかなければいけないと考えていますか。

名波 細かいこと、戦術うんぬんでやらなければいけないことはたくさんある。それとは別に、ベースの上積みと、ここまで繰り返し言っている、コミュニケーション能力のアップは欠かせない。それと、「俺がリーダーだ」とか「俺がみんなを引っ張っていこう」という選手が出てきてほしいな、と思っている。そういう選手の成長も促していきたい。

――月並みですが、来季の目標を聞かせてください。

名波 J1仕様のサッカーをやっているので、そのためにはJ1に昇格しないと、本当の意味でのスタートラインには立てないと思っている。ゆえに当然、J1昇格が最大の目標になる。だからといって、勝ち点のベースはこれぐらいとか、得点はどれだけ取って、失点はここまで減らすとか、そういう目標は明確には立てるつもりはない。もし考えていても、選手には伝えない。それでも、シーズンを戦っていく中で、「この試合は勝ちゲームにする」とか「この試合は引き分けでいい」とか、計算していくことがあると思う。そういう意思を、できるだけ選手と共有できるようにしていきたい。0-0の状態で、自分は「主導権を握っているんだから、勝ち点3がほしい」と思っているのに、(ピッチにいる)選手が「今日はアウェー戦だから引き分けでいいや」と思ってしまうような、意識のズレが生じないようにしたいな、と思う。

――監督が考えていることを、ピッチ上の選手がしっかりと理解してくれると助かりますよね。

名波 そうそう。だから、よく言う「ピッチの中の監督」みたいな選手がいると楽なんだけどね。その選手に自分の意図を伝えておけばいいから。でも、今はそういう選手がいないから、ずっと声を張って指示を送らざるを得ない。そうすると、試合が終わったあとは声がガラガラになるんだよね。できるだけ、のど飴をなめないで済むようにしたいんだけどね(笑)。

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