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ワールドカップの新ルールで起こるのは駆け引きの活発化「裏をかくような行為はいくらでもある」 (3ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Takeo Goto

【レギュレーションを逆手に取る】

 レギュレーションを逆手に取った例としては、2018年ロシアW杯での日本対ポーランド戦が記憶に新しい。

 グループリーグ最終戦で日本はポーランドに先制を許してしまったが、日本はそのまま反撃を試みることなく試合を終わらせた。

 日本と2位争いをしていたセネガルは、他会場で行なわれている試合でコロンビアに1点リードされていた。そのまま終了すれば、日本とセネガルは勝点で並び、直接対決は引き分け。さらに得失点差も総得点数も並ぶので"フェアプレーポイント"(警告・退場の数によって点数が減算されるもの)での争いとなって、日本の2位抜けが決まる。

 そこで、日本の西野朗監督は選手たちに攻撃をしないように指示したのだ。リードしているポーランド(すでに敗退が決まっていた)も無理はせず、両チームが自陣でボールを回して時間の経過を待つ。観客席からは、もちろんブーイングが飛んだ。

"フェアプレーポイント"による決着ではあったが、日本の行動はとても「フェア」と言えるものではなかった。

 その後、日本がラウンド16で強豪ベルギー相手にすばらしい試合を展開して、あのアンフェアな試合のことは記憶から消えた。だが、あれは西野監督の勝負師らしい賞賛すべき采配ではあったものの、ある意味で恥ずべき試合でもあった。

 W杯史上に残る最もスキャンダラスな試合は、1982年スペイン大会の西ドイツ対オーストリア戦だ。

 西ドイツは2戦を終えて1勝1敗の勝点2(当時は勝利=勝点2)。一方、オーストリアは2勝して勝点4だった。

 そして、前日の試合でアルジェリアがチリを破って勝点4に達していたので、西ドイツは勝利以外なら敗退だ。

 スペイン北部ヒホンで行なわれたオーストリア戦。10分に西ドイツのホルスト・ルベッシュが先制点を決めると、その後はどちらも攻撃は試みず、そのままのスコアで試合を終わらせた。3チームが勝点4で並び、得失点差で西ドイツとオーストリアの2次リーグ進出が決まるからである。

 僕はあの試合はバルセロナのホテルでテレビ観戦していたが、一緒に見ていたコロンビア人やオーストラリア人とあきれ返っていた記憶がある。

 この試合があったため、FIFAは次の1986年メキシコ大会からグループリーグ最終戦は同時刻に行なうようにレギュレーションを改正した。

 W杯は究極の真剣勝負。日本代表が本気で今回のW杯で優勝を目指すのであれば、レギュレーションの裏をかくような手段に頼らなければいけない状況もありうる。冷静に、そして狡猾に戦う必要がある。

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著者プロフィール

  • 後藤健生

    後藤健生 (ごとう・たけお)

    1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2025年、生涯観戦試合数は7700試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。

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