サッカー日本代表のベスト&ワーストシナリオ ワールドカップ優勝の夢を打ち砕く組み合わせとは (4ページ目)
【ベスト8は茨の道に】
このような"最凶"の組み合わせになれば、日本がグループリーグで2位以内に入るのは至難の業だろう。いや、3位も安泰ではない。欧州予選プレーオフの顔ぶれを見ると、トルコ、ポーランド、スウェーデンなど12チーム中4チームしか勝ち上がれない状況で、アジアがどれだけ予選が楽な地域か、わかるだろう。
今回のワールドカップから出場枠は32カ国から48カ国に増えた。グループリーグの4チームから上位2チームと3位の上位8チーム(12チーム中) がラウンド32に進出となる。グループリーグを勝ち上がっても、ベスト32に入ったにすぎないのだ。過去最高のベスト8に進出するには、ノックアウトステージで2回は勝つ必要があるのだ。
ノックアウトステージでは、ポット2、もしくはポット1の相手との試合になる公算が高い。たとえば、森保ジャパンはモロッコ、スペインとしのぎを削ってトーナメントを勝ち上がれるのか。
モロッコは各ポジションに優れた選手を擁し、勝つたびに強くなる。カタールワールドカップ4位の成績は伊達ではない。GKヤシン・ブヌ(アル・ヒラル)やDFアクラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン)は大会ベストイレブン候補のワールドクラスだ。
また、スペインはロドリ(マンチェスター・シティ)、ペドリ、ラミン・ヤマル(ともにバルセロナ)が世界最高フットボーラーの域にある。彼ら以外にもマルティン・スビメンディ(アーセナル)、アレックス・バエナ(アトレティコ・マドリード)、フェラン・トーレス(バルセロナ)らが異なる強さを発揮できる点で、カタールで日本に金星を献上した脆弱さはない。欧州王者として全盛期を迎えている。
「史上最強」と言われる日本の陣容も、チャンピオンズリーグで優勝を争う選手がごろごろいるスペインなどと比べると見劣りする。
森保ジャパンは地に足をつけた準備をするべきだろう。ポット2入りはアジア予選の成績が反映されたもので、ホームでの親善試合も当てにならない。ワールドカップで優勝するにはモロッコ、スペインのような相手に5連勝することが必要で、夢物語に近い。
FIFAランク18位の日本は現実的にベスト8を狙い、まずはグループリーグの相手を受け入れ、その先を目指すべきだ。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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