サッカー日本代表・森保監督の素顔 ベテランカメラマンが知る「ハートマーク」を見せる人懐こい姿 (3ページ目)
【全員一致で「ポイチだ!」】
この日の監督会見は、質問に対する回答がいつになく丁寧で、かかった時間も長く、50分近くも要しました。
そして会見終了して退席する際、驚くべきことが起きました。森保監督が一部の記者たちに向けて、なんとハートマークを作って見せたのです。
会見の去り際にハートマークを作って見せた森保監督 photo by ©️ヤナガワゴーッ!この記事に関連する写真を見る ふだんは真面目な森保監督の「人懐こい」姿を見て、思い出したことがあります。
それは、1992年の広島で行なわれたアジアカップ。翌年にJリーグ開幕を控え、日本中のサッカー熱が高まるなかで開催された大会でした。
メンバーは、1松永成立、2大嶽直人、3勝矢寿延、4堀池巧、5柱谷哲二、6都並敏史、7井原正巳、8福田正博、9武田修宏、10ラモス瑠偉、11三浦知良、12山田隆裕、13阪倉裕二、14北澤豪、15吉田光範、16中山雅史、17森保一、18神野卓哉、 19前川和也、20高木琢也(数字は背番号)。
最近サッカーを見始めた方々にはピンとこないかも知れませんが、まさに当時の日本サッカー界から最高のメンバーがそろっていました。僕がどれだけ胸を躍らせて広島へと向かったことか。スタジアム全体にチアホンが鳴り響き、日本は初優勝を果たし、準決勝のイラン戦で値千金のゴールを決めて「魂込めました、足に」の名言を残した三浦カズがMVPを獲得。
そんな大いに盛り上がった大会のなか、先輩カメラマンたちの間から「俺たちもカメラマンMVPを作って表彰しようぜ!」というムーブメントが起こりました。
1974年ワールドカップ西ドイツ大会でギュンター・ネッツァーを撮っている富越正秀さん、サッカー協会殿堂入りした今井恭司さん、1978年のアルゼンチン大会でマリオ・ケンペスを撮っている清水和良さん、日本唯一のサッカー専門カメラマン山添敏央さん......等々、先輩カメラマンは恐ろしいほどのレジェンドたちです。
「じゃあ、誰にするか?」となった時、もう見事に全員一致で「森保一、ポイチだ!」と。
監督の言うことを聞かない某ベテラン選手がピッチでカリカリしているなか、ボランチという当時まだ馴染みの薄かったポジションで真摯にボールを追いかけ、前後のバランスをとって玄人受けするプレーを見せていたのが、森保監督でした。
そうと決まればさっそく、すばらしいプレー写真を撮っていた清水さんの作品をプリントして額装し、サッカー協会の知り合いに事の顛末を説明して預けることにしました。すると、なんということでしょう、アジアカップ決勝戦後のセレモニーの最中に「MVPオブ・ザ・カメラマン賞は、森保一選手です!」と発表されたのです! なんていい時代だったのでしょう(笑)。
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