検索

サッカー日本代表のパスがつながらない理由 「プレッシングでブラジル撃破」の結果に隠された問題

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

連載第62回
杉山茂樹の「看過できない」

 ブラジル戦の日本は、前半5バックになりベタ引きした。にもかかわらず2失点を許すと、後半、高い位置からプレスを掛けるやり方に変更。それが奏功し、3-2のスコアで逆転勝ちを収めた。前半は「攻めるブラジル、守る日本」の構図がピッチに鮮明に描かれることになった。

 日本がボールを奪う位置は自ずと低くなった。そこからブラジルのプレスをかい潜り、相手陣内に攻め入る機会は少なかった。試合が一方的になった理由である。

 ボールを高い位置で奪わない限りチャンスにならない。それが浮き彫りになった試合でもあった。同時に、低い位置からボールを運ぶ力が不足している現実も露わになった。

ブラジル戦で存在感のあるプレーを披露した鎌田大地 photo by Fujita Masatoブラジル戦で存在感のあるプレーを披露した鎌田大地 photo by Fujita Masato 日本にとっていささかショッキングな話である。というのも日本には、ブラジルには及ばないまでも、「パスがよくつながるサッカーをしている」との自負があったからだ。

 いまに始まった話ではない。日本の自慢はかれこれ四半世紀前から中盤にあった。小野伸二、中村俊輔、中田英寿、藤田俊哉、小笠原満男、名波浩、遠藤保仁......に代表されるように、優れた人材が中盤に集まる傾向があった。技巧的な中盤選手にこと欠くことはなかった。その極端な"中盤至上主義"を筆者などは憂いたほどだ。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ元日本代表監督が、2018年ロシアワールドカップ直前に解任に追い込まれた理由も、パスをつなぐサッカーを好む日本人の趣向から外れたサッカーをしたことが一因だとされた。

 ブラジル戦だけではない。FIFAランク37位のパラグアイに対しても、日本はパスをつなぐ力で劣った。中盤のパスワークはいつのまにか日本のセールスポイントではなくなっていることが、白日の下にさらされた。

 選手の問題に触れる前に、3-4-2-1という布陣との関係に注目したい。ボールを奪う場所が最終ライン付近なら、布陣はその瞬間、5-2-2-1になる。したがってボールは、中央を競り上がるように運ばれることになる。ピッチの中央は360度の世界だ。180度のサイドと比較すれば、その分、難易度が上がる。四方から相手に狙われている状況のなかを前進するわけだ。

この続きはcodocで購読
杉山茂樹の「看過できない」

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

キーワード

このページのトップに戻る