サッカー日本代表・森保監督の素顔 ベテランカメラマンが知る「ハートマーク」を見せる人懐こい姿 (2ページ目)
【30年前は歯が立たなかった】
キックオフのホイッスルと同時に南野、佐野海舟、中村敬斗がブラジル陣内に攻め込み、右サイドからは堂安律が切り込んでいく。早々に2点を奪われましたが、攻撃の手を止めない日本に対して、ブラジルは浮き足立っているように感じました。
そして後半、ブラジルのちょっとした、しかし重大なミスを見逃さなかった南野が右足を振り抜いて反撃の狼煙を上げました。このゴールで試合の流れは日本に傾き、さらに伊東純也のピンポイントクロスに反応した中村が同点ゴールを決めると、最後は上田綺世が伊東の高精度コ-ナーキックにヘッドで合わせて逆転。ブラジル相手に歴史的勝利を挙げたのです。
試合前に森保監督と仲良く握手していたカルロ・アンチェロッティ監督は、試合後に森保監督が握手しにいくのを無視して帰ってしまいました。名将がそんな態度を取ってしまうほど、世界に衝撃を与えたゲーム。初のブラジル戦勝利で、メディアルームは異様な熱気に包まれていました。そんな雰囲気のなかで開かれた監督会見。
インタビュー冒頭、日本人記者による「親善試合ではありますが、ブラジルに勝った気分を教えてください」との質問に対し、森保監督は「親善試合とはいえ、ブラジルに勝つのは簡単ではありません」と、キッパリと返した。そしてこう続けます。
「先輩、関係者のみなさん、日本サッカーがチャレンジし続けてきたことが、今日の結果につながったと思います。ケガ人などのマイナス要因があったとしても、ポジティブにとらえ、常にその時のベストを目指す。劣勢のなかで切れないメンタリティと、個々の強さをもっと上げていき、最高・最強のチームをつくることが私のできることです」
力強く語ったあと、今度はブラジル人記者の「30年前のイングランドでのブラジル戦、覚えていますか?」との質問には、思わず表情を緩めた。
「久しぶりに質問をいただき、思い出しました。4カ国対抗戦ですね。後半に10分くらいは出たかな......その頃はまったく歯が立たなかったと記憶しています」
1995年6月6日、リバプール。アンブロ・カップで、日本が初めて国際試合でブラジルと対戦した記念すべき試合だ。結果は0-3。
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