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サッカー日本代表は攻めきれず、守りきれず 戦術は迷宮入りのままブラジル戦へ (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【5バックでも守れていない】

 守備面の問題はさらに深刻さを増す。とりわけ9月の2試合で露呈した課題を修正できていないことが、不安を煽る。

 日本の守備の問題は、5バックで守る時間が長くなればなるほど、失点のリスクが必要以上に高まってしまうところにある。それは、特に自陣ボックス付近での守備に慣れていないアタッカーがWBを務めるリスクと深い関係にある。9月のアメリカ戦では、それが失点に直結してしまったのは記憶に新しい。

 その問題を回避するために、日本は前からのプレスを機能させ、ボールを失った直後の即時回収と合わせて、敵陣で攻撃し続けることを目指してきた。しかし、予想されていたこととはいえ、アジアではある程度それができても、W杯レベルの相手との対戦になると、そう簡単にはいかないのが現実だ。

 9月に対戦したメキシコは、開始から約15分こそ日本の前からのプレスに慌てたが、その後、立ち位置を変化させてプレス回避に成功。試合の流れを大きく変えた。

 この試合でも、日本はメキシコ戦同様に、試合開始から2シャドーが前に出て相手CBに対してプレッシャーをかけ、1トップがボランチをマーク(この試合では小川が相手のダブルボランチのひとりをマーク)。両WBがサイドバック(SB)にプレッシャーをかけることで前からハメに行ったが、それを研究済みのパラグアイは、試合開始からプレス回避に成功。そのために多用したのは、ロングボールだった。

 しかも1トップの9番(アントニオ・サナブリア)は、ボールを収める能力にも長けているので、ロングボール戦法がより効果を示した。パラグアイが前半に記録したGKおよびDFによるプレス回避のロングボールは計9本。そのうち5本はマイボールにつなげて反撃に成功し、20分には決定機も作っている。

 もちろん、パラグアイもパスをつなぎながら日本のプレスを回避するのが理想なのかもしれないが、ロングボールでこれだけ日本陣内に前進できたことを考えれば、十分に効果的な日本対策だったと言っていい。逆に、4バックで戦ったアジアカップでロングボールに苦しんだ日本としては、3バックでもロングボール問題が再燃する格好となってしまった。

 できれば自陣に下がって5バックで守りたくない日本は、意図的かどうかは別にして、この試合の後半ではミドルゾーンにおいて4バックで守るシーンが垣間見られた。右WBの伊東が右SBとなり、右シャドーの堂安が右MFに落ち、左WBの中村が左MFになって4-4-2を形成した(南野と小川が2トップ)。

 これがひとつの解決策だったのかもしれないが、しかし自陣ボックス付近では5バックで守るかたちに変化するため、特に守備時の中村の立ち位置が曖昧な印象を受けた。それにより、アメリカ戦に続いてこの試合でもWBにアタッカーを配置する弊害による失点を許している(パラグアイの2点目)。

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